「これってもしや、殴り込みですか!?出入りですか!?」

「いや、サバゲーだ」

落ち着き払った各務の説明はこうだ。

さる会社の社長に金を貸したがこれがなかなか返さない。催促すれば、

「法定利息以上は嫌だ」と突っぱねる。

やむなく協議を重ねた結果、社長の趣味のサバイバルゲームで決着をつけることになったらしい。

「ルールは簡単だ。時間無制限、1人でも多く仕留めたほうの勝ち。お嬢が加わるから7対7だな。ただし、頭を取られたら終了。俺か社長だ」

「人を殺傷せぬ遊技とはこれぞ叡智の極み!気に入ったぞ!これ明空?武者震いか?気が早いの!」

荒神さまは上機嫌だが、すでに明空は真っ青になって震えていた。

「使用するのはペイント弾だ。命中すると破裂して赤色のペイントが飛び散る。お嬢、着替えてこい。服が汚れるぞ」

「き、着替えるって迷彩服に?」

「おお!形を整えれば、心も自ずと整うというワケじゃな!なかなかの妙案じゃ!では早速着替えようぞ、明空!」

相変わらずノリノリな荒神さまとは対照的に、明空は戦う前から気絶寸前だった。

それでも、どうしても兵士のような迷彩服は怖くてイヤだと駄々をこねる。

やむなく長袖のTシャツと黒のズボンで許してもらった。

千草に留守番を頼み、明空と各務たちは黒塗りのSUVに乗り込み、社長の会社に向かう。

「フィールドは都心から離れた会社の敷地を含めた約1キロ圏内だ。関連施設や倉庫まで含まれてるが、何しろお嬢は素人だ。適当な建物の陰に隠れて、バトルが終わったら出て来い」

「それではつまらん。わしらも助太刀致すぞ」

後部座席でマップを広げる各務に、荒神さまが口を尖らせる。

「荒神さまは不測の事態に備えて、これでお嬢を守ってください」

そう言うと懐からナイフを取り出す。

「ひッ!」

「落ち着け、明空。おもちゃだ」

明空が恐る恐る受け取ると、荒神の言う通り、外見は本物のサバイバルナイフだが刃はバネ式で押すとカシャンと引っ込んだ。

「近接戦闘の“ナイフファイト”で使用してください。敵に組付かれたら、非力なお嬢は不利ですから」

「うむ!久々に腕が鳴るわい!最強武闘神は得物は選らばぬ!短剣も飛び道具もどんと来いじゃ!」

やたらと高まる荒神様に、みるみる萎れていく明空。

そうこうしているうちに一同は目的地、阿修羅ハウスに到着した。