そして服の中に押し込んでいた新聞紙を取り出す。

手早く広げながらなるべく湿っていない新聞紙を探し、

両手でクシャクシャに丸めると火を着けようとする。

「……着かない……早く……」

マッチが湿って上手く着かない。

ライターは持っていない。

どこかで買っていればよかった!

また1本、もう1本とマッチを擦る。

雨で濡れないように新聞紙とバラバラに解体した社に覆いかぶさる。

雨風に掻き消され、残り4本となった時、

マッチ棒は、『シュッ!』という音を立てて初めて燃え上がった。