普段の明空なら社を燃やすなどという、

罰当たりなことは思いつきもしなかっただろう。

だが、馴れない山登りで体力を消耗し、

低体温症になっていた明空の判断力は急速に低下して行った。

《社》の屋根はみるみる内に剥ぎ取られ、

観音開きの扉も壁もきれいにむしり取られる。

もともと、長年の風雪に耐え、かなり傷んでいたのだろう。

《社》はあっという間に明空の手でバラバラに解体されてしまったのだった。

明空は背負っていたリュックを降ろすと雨に濡らさないように、

慎重にマッチを取り出す。