そして翌日──
私はなんの妨害も受けず、無事面接10分前には面接場所の会社に到着する事が出来た。
今までの苦労は本当に一体なんだったのだろう?
けれど、これが本当にあのキスのおかげなら……本当に、それ以上すれば……。
「……カワ……立川……?」
「えっ? はっ、はいっ!」
心ここにあらずだった私の目の前に突如現れた彼はどこか見覚えのある、スーツ姿がとてもよく似合う好青年だ。
「立川だよな? 久しぶり」
「へっ? もしかして……あっ、相原……君!?」
こんなオフィス街のど真ん中で、まさかの知り合いに遭遇するとは、思ってもいなかった事に、驚きと懐かしさに思わず声をあげた。
「奇遇だな。こんなとこで会うなんて、大学卒業以来だから……5年ぶりくらい?」
「うっ、うん」
相原君は私の大学の同期、そして同じサークルの仲間だった。
在学中はカナリ仲も良かったが、卒業と共に疎遠となった。
まあ、相原君だけではなくほとんどの大学の友達が今の私には疎遠になっている。
毎度毎度の携帯・手帳・財布、その他もろもろの紛失、今の私はみんなからしたら音信不通の人代表だと思う。
「立川もしかして、会社この辺?」
5年の月日は残酷だ。
大学の時は少しまだ子供っぽさのある彼だったが、今の相原君は立派な社会人へと変貌を遂げていた。
無職の私とはまるっきり輝きというか、オーラさえ違ってみえる。
まあ、今の私には仕事をしている全ての人が、こう見えてしまうのだが……。
「私、今仕事探してて……、今日はここの会社で面接なの、バイトだけど、相原君はこの辺で働いてるの?」
「うん、えっ? ここで面接? オレの会社ココなんだけど」
「へっ……? えっ? え──っ!?」
そこから、私の幸運、いや怒涛の奇跡が続く。
相原君に案内され、面接会場に行くと面接官の方が相原君の直属の上司、しかも私達の大学の先輩でしかも、サークルのOBだったという事が発覚。
更に更に、私と同じ地方出身だという事で地元トークに花が咲き、なんとウチの実家の定食屋の常連だったという事実が判明。
こんな事ってあるのか? というくらいの偶然にお互い驚き、それなら! という事で即採用を頂けた。