だけど──
それから二週間、一ヶ月、私の面接はことごとく失敗、全く次の仕事が見つからない。
このままでは、貯金もいずれ底を尽きてしまうだろう。
正社員だけではなく、アルバイトも視野に入れて職を探すが、なかなか見つからない。
これもまた、もちろんヒイラギのせいなのは明白だ。
当のヒイラギはというと、すぐ側の喫茶店で調理のアルバイトを速攻決めていた。
当人には不幸な事は起こらないという、なんとも理不尽な話しである。
「ねぇ、ヒイラギ……」
「なに? もしかして、ポテトサラダ嫌いだった?」
今日の晩ご飯は珍しく洋食だった。
オムライスとオニオンスープとポテサラ、恐らく、バイト先でレシピを色々と仕入れてきたのだろう。
「私の仕事がみつからないのって……やっぱりヒイラギのせいだよね……」
「えっ……えっと~……どうだろう?」
やや分が悪そうに、珍しくヒイラギが私から目を逸らす。
「今日の面接、私の乗る電車の1本前の電車にまさかの落雷、電車は一日復旧出来ず、振り替え輸送のバスも道路工事の大渋滞で全く来ず、タクシーも拾えないし、歩いて向かったら、どこも通行止めで結局面接に行けなかった……って事がもう10社もあるんだよ!? おかしいでしょっ!?」
「うっ……ううん~っ……」
「電車で行くような遠い距離がダメなんだと、歩いて行ける距離のとこを受けたら、家を出た瞬間に頭に鳥のフンが落ちて来たり、車におもいっきりドロはねされてスーツがびしゃびしゃになったり……ともかく! ツイてない事この上ないの!!」
「ご、ゴメンね?」
また、まただ……。
その潤んだ瞳を私に向けるのはやめて欲しい。
それをされるともう何も言えなくなってしまう。
「はぁ~っ……もういいよ、どうにかこの不運を回避する方法があればいいのに……」
「あるよ」
「そうだよね、あるわけないよね……んっ?
えっ? 今なんて言ったの?」
「あるって言ったの」
「あるの!? ちょっ、ちょっと、どういう事!? あるの!?」
「あるよ、ただ、これはなずなが結婚を受け入れて、祝言をあげてからって思っていたから……」
「なっ、なんでっ!? そんな悠長な事言ってる場合じゃないでしょ!? あるんだったら、なんでもっと早く教えてくれなかったの!?」
私は思わずテーブルに身を乗り出した。ヒイラギはそんな私と対照的に身を引いて、ぶつぶつと先ほどと同じ事を呟いている。
「だから、それは……祝言をあげてから……」
「いいから、今は一大事なのっ! ともかくなんでもいいから、その方法とやらを教えてよ」