そう、このイケメン、ヒイラギは正真正銘
貧乏神なのだ。
「ご、ごめん……弁償するから」
「うぅっ~……もうっ、なんでアンタ貧乏神なのよっ!? どうせなら福の神が良かった!!」
「ご、ごめんね……」
私がこのヒイラギと出会ったのは、今から3ヶ月前の事。
彼は突然、私の前に現れてこう言った……。
「立川 なずな──キミを我が伴侶として迎える」
と……。
私は突然目の前に現れた物凄いイケメンからのプロポーズと、更にこのあまりにもぶっ飛んだ信じられない状況に言葉を失い。
否定も肯定も答える事が出来ず……、気が付けばこの同棲生活を送るハメになってしまっている。
「なずな、あとは僕がやっておくから、なずなはお風呂に入っておいでよ」
困った様に少しはにかんで、貧乏神という事を除けば全てが完璧のイケメンは私の頭を優しく撫でた。
「うん……」
私は全く覚えていないのだけれど、ヒイラギは私が幼い頃に秘密基地だと言ってしょっちゅう行っていた寂れた神社に住み着いていた神様で、その当時はよく一緒に遊んでいたらしい。
全く覚えていないと言ったら、人間は神様との戯れを数えで7歳までしか覚えていられないのだそうだ。
何故、7歳までなのかと言うと七つまでは神様の物だからとかなんとか……?
とりあえず私にはよくわからないが、そういう決まりだと説明された。
そしてその頃から私に目を付けていたんだそうだ。
ヒイラギは、私にずっと恋慕の感情を抱き続けていたのだという。
ストーカーだと言ったら酷く落ち込まれたので、それ以降は言っていない。
ちなみに、ヒイラギという名前は昔、私が彼に名付けたものらしい。
「あ~あっ……ほんとツイてない」
小さな脱衣所で服を脱ぎながら、独り言を言う。ここ最近、毎日がこんな調子だ。
カバンの落下した足の甲は少し赤みがさしている。
大きなケガや病気はないが、小さな嫌な事には積み重なって見舞われる。
これがヒイラギという貧乏神に愛された(とり憑かれた)私におこる[障り]というものらしい。
「アザにならないといいな」
シャワーのコックをひねり、最初に流れ出た流水にさきほど痛めた足の甲をあててみる。
今のところ、痛い思いはあってもキズやアザにはなってはいないので、恐らくコレも大丈夫だとは思う。
温まりはじめたお湯を頭からかぶり、嫌な気持ちも洗い流そうとした。
「ふ~っ……」
ため息ばかりが口から吐き出される。
どうして私がこんな目にあうのか、いわゆる貧乏クジばかり引いてしまうのか?
それは貧乏神が側にいるからだといえば簡単なのだけど……。