「……わかった、でしょ? 私が好きな人……」
「なずな……でも……」
「でもとか無いっ!! 大体アンタ貧乏神なんでしょっ!? なら、私の幸せより不幸にする事を考えなさいよっ!?」
「そ、そんな……僕はなずなに幸せになって欲しいんだけど」
「うるさいっ!!もうっ、いいから側にいなさいって言ってるのっ!!」
「それって……プロポーズ?」
「いいから……」
私達はもう一度キスをした。
「実を言うと……さっきので、なずなが本当に僕を好きだって事は……わかっちゃったんだけどね」
「えっ? どういう意味?」
ぽんぽんと頭を撫でられたが、私には全く検討がつかない。
「記憶……思い出したでしょ?」
「……記憶?」
「僕と会った時の記憶、アレ消したんじゃないんだ……」
「どういう意味?」
未だ私には、失われた私のヒイラギと過ごした時間と、私がヒイラギを本当に好きだという事の繋がりが見えて来ない。
「なずなの記憶に鍵を掛けてたって言ったら、わかりやすいかな?」
「私の記憶を、封じてたって事?」
「そうっ、そして鍵を開ける方法は、僕を本当に好きになってくれる事……」
「なっ……!?」
私はさっきヒイラギに記憶を思い出したと、もうそれこそ、ここでヒイラギを見つけてすぐくらいには、記憶を取り戻した宣言をしていた事に気づく。
つまり、もうその時点でヒイラギに好きバレしてしまっているという……事っ!?
突然、真実を知らされ、私は自分でもわかるほどに顔がみるみる赤くなっていってるのを感じた。
そういえば、私が記憶を思い出した事をヒイラギに告げた時、彼は何故だかひどく狼狽えていたし、信じられないという様子だった……。
つまり、それは────
「じゃあ、アンタさっきからそれを知ってたって事……」
「うっ、うん……」
「ヒイラギ……あんたね~……」
しかし、私がそれ以上彼に抗議をする事はすぐに止められてしまった。
何故なら突然手を引かれ、気が付けば彼の腕の中にいたからだ。
「貧乏神から逃れられる、最後のチャンスだったのに……本当に、良かったの?」
「うん……だって、アンタだから……」
「もう、この機会を逃せば本当に解消出来ないよ……」
「だから、いいってば……それに……」
「それに?」
「障りから逃れる方法……だってあるんだし……」