再び友人達とも繋がれそうなのだ、またぼっちには戻りたくない。
「それに?」
「こんな不運続き、耐えられない!」
ヒイラギは大きく溜息すると、重々しく口を開いた。
「そっか……そこまで言うのならわかったよ、それで、いつする?」
「今日!」
「き、今日!? い、いくらなんでもそれは……」
「だって、明日からでも来て欲しいって言われたから勢いで、はいっ!って答えちゃったもの……明日行って、もうクビになる事だって有り得るし……そんなに悠長な事言ってらんない」
「で、でも……」
ヒイラギは俯き、もじもじと両手の指を合わせて口ごもる。
「なに? アンタまさかこの期に及んで私としたくないって言うの?」
「ちっ、違うよっ! そりゃ僕だって男だし……なずなとしたいに決まってるけど……でも、その……まだ心の準備が出来てないし……」
それは私だって同じだ。
けれど……せっかく上手く行った面接、取り戻した友達をまた手放すのは、不運続きだった私には耐え難いのだ。
「ねぇっ、私がこんなにお願いしても……ダメ?」
真剣なトーンで、私はヒイラギを見つめた。
目が合うと彼は頬を赤らめ、そして静かに頷く。
「もうっ…………わかったよ」
ヒイラギは私の懇願に観念したのか、大きく息を吐きそれから準備をしてくると小さく呟いて、バスルームの扉をそっと閉めていった。
曇りガラス越しに見えるヒイラギの影が見えなくなると、ようやく一人になってから冷静にこの状況を考える。
「…………私、本当にするの? ヒイラギと……」
自分から申し出ておきながら、いざ本当に実行する事が決まってしまうと、怖じ気付いてくる。
「いや、せっかく取り戻しかけている私の日常の為なんだから! これぐらいの事……」
なんとか気持ちを奮い立たせ、私は勢いよく浴槽から立ち上がると、もう一度念入りに体を洗ってからお風呂場を出た。
緊張していないと言えば嘘になる。
頭の中で色々とこの後の事をシュミレーションしてみた。
けれど……
相手がヒイラギだと考えると、気恥しさが勝ってしまい、頭の中が真っ白になって何も考えられなくなってしまう。
ヒイラギと──
ダメだ!
全く何も考えられない。
昨日キスだってしたし、裸ももうさっき見られてるというのに……。
(本当に私、大丈夫なのかな……)
その日は、お風呂からなかなかあがれずにいた。