「……ねぇっ、今日の面接どうだった?」
ヒイラギはバスルームの扉の隙間から顔を覗かせてきた。
「コラっ! 覗き禁止!」
「ゴメン……でも、どうしても気になって……どうだった?」
その表情はまるで縋りつく様な、どこか申し訳なさそうな、それでいていつものヒイラギには無い真剣な瞳で……、ふいに昨日のキスの事が私の頭を過ぎり思わず目を逸らしてしまう。
「なずな?」
「えっ? ち、違う違うよ! 大丈夫だった! 面接は大丈夫、即採用されたんだから! み、水かけられたのは終わった後だったし……」
「そう……他には? 他に何かなかった?」
「他? 特には……なかったよ」
「そう……」
どうしたのだろう? ヒイラギの表情は幾分か優れない様に見える。
「どうかした?」
「いや……別に……」
なんだか妙な空気が流れた。
何かあったのだろうか?
けれど、それをなんとなく追求する事が出来ず、私は気にしてないのを装って別の質問を投げかけた。
「あっ……っ、あのさ、またその……お試しっていうのしたら……その……障りの回避は出来る?」
「……それはわからないよ」
「わ、わからないっ!?」
「アレは、あくまでちょっとしたお試しだって言ったでしょ……」
「じゃあ、しても意味ない?」
「意味ないというか、二度も効果があるかは僕にもわからない……」
「えっ? そうなの?」
「正式な誓約とは違うもの……そ、それに運が向上したとかいうわけではないんだよ? あくまで面接の結果はなずな次第なんじゃない?」
「まぁ……それはそうだけど……」
なんだか最近不幸続きで、普段なら大丈夫だった様な事がスムーズにいっただけでスゴくツイてる気がしてしまっていた……。
でも言われてみればそうだ。あくまで、面接の結果は私次第。
けど、このままだと……やはり不運がやってきて、せっかくの良い結果も悪い方に転ぶ確率が高くなるのではないか?
せっかく決まったのに、突然明日になったらやっぱり不採用とか……。
会社がまた突然倒産だって、今までの経験から考えてありえない話じゃない。
そんな思いが頭の中をぐるぐる巡る。
「……じゃ、じゃあ、やっぱりダメって事……」
ヒイラギと出会う前までの、普通に仕事をして、友達もいた頃の私にどうにかして戻りたい。
それだけなのに……また、不運続きの毎日に戻るなんて……。
「そんなのイヤーっ!!」