ノートには紗雪のことや森川先生のことが書かれている。そしてページの途中には、紗雪が間違っていると確信できることが書いてあるのを太一は知っていた。
あの日。森川先生に会いに行った日に、このノートを見せてもらったから。
だからこそ紗雪の話を聞いたとき、太一は紗雪の間違いに気づけた。
今日森川先生を呼んだのは、紗雪と森川先生が家族として再スタートできるように。そう思って太一は森川先生を呼んだ。
でも、今はそれだけじゃないことがわかる。紗雪の根本的な思い違いを解消できるかもしれない。崩壊していた二人の関係を、取り戻すことができるかもしれない。
紗雪はページを捲っていく。紗雪の目には母親が書いた文章が映っているはずだ。そして、ふと紗雪の手が止まった。
太一もノートを覗き込む。月明かりに照らされた文字が目に入る。
そこには森川先生に向けて書かれた文章が、ぎっしりとページを埋めていた。紗雪は目を動かして、書かれた文章を黙読していく。
「……嘘……」
紗雪が口に手を当てた。辿り着いてほしかった一文に、目を通してもらえたと太一は思う。
ノートには、紗雪が信じていた母親の言葉とは真逆のことが書かれていた。
『これからも、ボンドの研究を続けてください。もう二度と不倫など起きないように』
森川先生は病院で太一に言っていた。ボンドの研究を続けるのは、紗雪と有香の母親の願いでもあると。だから紗雪がボンドを否定しても、それだけは譲れない。問題はボンドの研究を続けているからじゃない。私が紗雪を放っておいたのがいけなかったんだと。
だからこそ太一は紗雪にわかってほしかった。話し合えばわかることを、ずっとしてこなかった紗雪に伝えたかった。本当の家族は何でも話すことができる、かけがえのない存在なのだと。話さないままでいると、色々と掛け違えることがあるのだと。
「お父さんに聞きたいことがある」
「……何だ?」
「森川有香って知ってる?」
森川先生は首を縦に振った。紗雪はノートに視線を移していた。ノートには森川先生が不倫したことが書かれている。おそらくその部分を紗雪は見たんだと太一は思った。
「ああ。有香は……私の子だ」
「そうなんだ……」
あの日。森川先生に会いに行った日に、このノートを見せてもらったから。
だからこそ紗雪の話を聞いたとき、太一は紗雪の間違いに気づけた。
今日森川先生を呼んだのは、紗雪と森川先生が家族として再スタートできるように。そう思って太一は森川先生を呼んだ。
でも、今はそれだけじゃないことがわかる。紗雪の根本的な思い違いを解消できるかもしれない。崩壊していた二人の関係を、取り戻すことができるかもしれない。
紗雪はページを捲っていく。紗雪の目には母親が書いた文章が映っているはずだ。そして、ふと紗雪の手が止まった。
太一もノートを覗き込む。月明かりに照らされた文字が目に入る。
そこには森川先生に向けて書かれた文章が、ぎっしりとページを埋めていた。紗雪は目を動かして、書かれた文章を黙読していく。
「……嘘……」
紗雪が口に手を当てた。辿り着いてほしかった一文に、目を通してもらえたと太一は思う。
ノートには、紗雪が信じていた母親の言葉とは真逆のことが書かれていた。
『これからも、ボンドの研究を続けてください。もう二度と不倫など起きないように』
森川先生は病院で太一に言っていた。ボンドの研究を続けるのは、紗雪と有香の母親の願いでもあると。だから紗雪がボンドを否定しても、それだけは譲れない。問題はボンドの研究を続けているからじゃない。私が紗雪を放っておいたのがいけなかったんだと。
だからこそ太一は紗雪にわかってほしかった。話し合えばわかることを、ずっとしてこなかった紗雪に伝えたかった。本当の家族は何でも話すことができる、かけがえのない存在なのだと。話さないままでいると、色々と掛け違えることがあるのだと。
「お父さんに聞きたいことがある」
「……何だ?」
「森川有香って知ってる?」
森川先生は首を縦に振った。紗雪はノートに視線を移していた。ノートには森川先生が不倫したことが書かれている。おそらくその部分を紗雪は見たんだと太一は思った。
「ああ。有香は……私の子だ」
「そうなんだ……」