俺はポツリと呟いて、そっぽを向く。
「…辻本さん呼び。え?マジか。夏夜ちゃん
に」
友は、ニヤニヤした顔で俺に聞いてくる。
「バカ。声でかい」
俺はシッと鼻に手を伸ばして、自分の席に
座り、昨日置いていたカバンを持ち、今日持
ってきたカバンの中に入れ始めた。
カバンの中に入っているのは、教科書2冊。
自分のロッカーに入ってなかったものが入っ
ている。
だから、さほど重くはない。
教室にいると、周りの視線が前より感じる
ようになった。
「なんか教室前より良い心地悪いんだけど。
俺そんな目立ちたくないんだけどな」
俺は机に顔をつけてから、ため息をついた。
「…そりゃ、無理だろ。夏夜ちゃんと地味オ
タクが話してたら、なんで?ってなるだろ」
友は頬杖をついて、俺を見てくる。
「……そうだよな。はあ」
俺は納得するかのように返事をした。
「でも、楽しそうじゃない?」
友は人ごとのように笑って、楽しそうだっ
た。
「……はあ」
その後、授業が始まったので、俺はカバン
から教科書を取り出した。
授業を受け始めると、いつのまにかお昼に
なっていた。
「…お昼ちょっと用事あるから。友さっき食
べてて。遅くなるかもしれないから」
「おう。行ってらー」
友に俺はそう言ってから、手をあげて、カ
バンごと俺は屋上に向かった。
友は少し寂しそうにしていたが、俺は心の
中で謝った。
ゆっくり屋上に向かい、ドアを開けると、
そこには辻本さんがいた。
「…待ってたよ」
辻本さんは体育座りをして、空をジッと眺
めていた。
「…朝行ったら、辻本さんいなかったけど。
もしかして、ずっとここにいたのか」
俺は朝会って以来、見ていなかったし、出
席取る時もいなかったから、どうしたのかと
思った。
「……そうだけど」
「……辻本さん。いつも授業ちゃんと受けて
たよね。友だちも心配してたよ」
「…心配ね。まあ、いいや。アイドル興味持
たせてよ」
「……じゃあ、そういうならちゃんと聞いて
よね。いいか?」
「いいよ」
辻本さんが返事した後、俺はすぐカバンか
ら雑誌を取り出した。
「この表紙は、炎っていうアイドルグループ。
今人気爆発中で、ライブのチケットは即完売。
フアン達は、1秒でライブのチケットを取れ
るかっていう勝負。いや、戦だよ。