「おはよう」
俺は教室に着くと、俺の席の近くに友はい
た。
「おはよう。元気なくない?」
友は手を挙げてあいさつをしてきてから、
俺のテンションが低いことを気にしていた。
「……ずっと考えていた」
俺は自分の席に座って、顔を机に置いて、ぽ
つりと呟く。
友はえ? と聞き返されながら、唐突に言
う俺に答えてくれた。
「なにを」
「…どうやったら、アイドルに興味持つか」
素直に思っていることを友に言う。
「夏夜ちゃんにどうやってアイドルを興味持
たせるか?」
すると、友は俺に頬杖をつけて聞いてくる。
「そう」
「真面目に考えてんじゃん」
ニヤニヤとした表情で俺を見てくる。
「そんなんじゃないから。俺はあいつをアイ
ドルにどうやって興味持つのか見てみたいだ
け。大した理由じゃない」
俺がそう言うと、誰かの声がした。
「じゃあ、私にアイドルとやらを興味持たせ
てよ」
そこには、俺たちの目の前に夏夜がいた。
「……あ」
俺たちは唖然として、ただ夏夜を見つめた。
「聞こえてる?」
夏夜にそう聞かれて、俺たちは、ハッとし
たかのように現実に戻る。
すると、教室のクラスメイト全員と他の教室
の方達も俺たちを見てくる。
ヒソヒソと。
なんで夏夜さんと話してんだ。あいつら夏夜となんかあんの?
もしかして、脅された?
いやだ、それ。ないない。など
聞こえてくる。お前らは聞こえないように
言っているが、こっちは聞こえてんだよ。
「なに」
「なにじゃないよ。だから、アイドルをどう
やって興味持たせるの!」
夏夜はさっきより大きい声で言ったので、
俺は立ち上がり、夏夜の肩をポンと左手で置
いてから、俺は夏夜の右手を掴んだ。
「なっ!何すんのよ」
「いいから!」
俺はいつもより大きい声で言い、ズカズカ
と足幅を広く、走った。
走ろうとした時、友が何か言っていたが、
俺は聞こえなかった。
「…ちょっと、どこまで行くの」
夏夜が俺に言いかけたので、後ろに振り返
りハッとして夏夜と手を繋いでいた右手を見
た。
「…あ、ゴメン」
夏夜にそう言いながら、俺は下に俯いて顔
を赤くなった。
夏夜は俯き加減で、俺を見てくる。