俺は椅子から立ち上がり、夏夜に発言した。
「それは人の勝手でしょ」
夏夜はムッした表情を浮かべて、俺に言う。
「秋斗。どうしたんだよ。急に」
友は立ち上がった俺を下から見下ろしなが
ら、夏夜と俺を右、左と顔を動かしてアタフ
タしていた。
「興味ないと言っている時点でもう興味ある
んじゃないか」
俺は自分らしくない程、何故か夏夜に言い
放つ。
「興味ないって言ってんの。なんで分からな
いの!」
夏夜は俺の反応にイラッとしたのか眉を寄
せていた。
「じゃあ、俺がアイドル興味持たせてやる
よ!」
俺は何を言ってるんだろう。
自分でもよく分からない。
「秋斗?」
友は目を見開き、俺の名を呼んだ。
「だったら、やってよ。私は用事あるから帰
る」
夏夜はそう言ってから、どこかへ去ってい
た。
俺は呆然と夏夜を見ていた。友は俺と夏夜
をどちらとも見てから、俺に言う。
「ど、どうしたんだよ。秋斗」
「いや、俺も分からない。なんで俺あいつに
言ってんだ。勝手にすればいいことなのに」
俺は一旦座り直して、両手で頭を抱えた。
「……珍しい。初めて会った相手に必死に言
い放つ秋斗は初めて見たから」
友は面白そうに俺を見ながら、話しかけて
きた。
「……ただムカついただけだ」
俺はテーブルに頬杖をして、さっきまでの
会話を頭の中で再生した。
ただ、ムカつく。アイドルを馬鹿にするよ
うな言い方。
「ふーん、ならいいけど。じゃあ、どうする
の?夏夜ちゃんにアイドル興味持たせるの?」
友は、疑問に思っていたことを俺に言う。
「……あっ」
俺は目を大きく開けて、友を見る。
「やっぱり。忘れてたか。勢いだけで言った
んだな」
はあっとため息をつけて、俺に聞いてくる。
「なんとかなる、多分」
俺は苦笑いを浮かべて、なんともない振り
をした。
なんともなくはない。
俺が勝手に言ったことだが、どうしよう。
「なら、今のうちに考えておいた方がいいん
じゃない?」
友は優しいけど、今はこの言葉が突き刺さ
る。
「……だな。友今日はファン活動なしで。少
し頭冷やすわ」
俺は一旦家に帰って、考えたかったので、
今日はファン活動は取りやめた。
「おう。わかった」
友は俺に返事してから、早足で帰ってしまった。
おそらく、友一人でファン活動するので、家に帰宅するのだろう。
俺はトボトボと学校を後にした。