「はあ?お前学校にはアイドル雑誌とか持っ
てこないでしょ。なんで持ってきたんだ」

友は俺に近づきながら、聞いてくる。

「隼也の誕生日だから」

 俺はボソリと友の近くで話しかける。

「え?誕生日だから持ってきたの」

 友は驚いた様子で俺を見てきた。

「友ならわかるでしょ?」

 俺は雑誌を持ってくるのは、アイドル好き
なやつなら分かるだろう。

「分かるけど。俺も推しの誕生日ならそうす
るが、携帯で読めばいいだろう」

 友は首を縦に振りながら、分かる、分かる
よと俺に言ってきた。

「ちゃんと、推しを眺めていたいのに。逆に
電子だとリアル感がないの。紙媒体だとなん
か違う気がするの」

 俺は教室にいるので、必死に目で友に訴え
ながら早口で答える。

「うーん、言っていることは分かる。だが、
今はその雑誌を探すべきでは」

 慌てている俺を友は冷静に判断して、正直
に答える。

 俺が何かに焦ったり、慌てたりすると、的
確に判断してくれる友には感謝しかない。

「……そうだな。探そう」 

 俺は返事をして、人が少なくなった教室内
を探し始める。

「僕も探すから。教室内にあるはずだよな」

 友はそう返事をした後、すぐに教室内を探
してくれた。

「ありがとうな」

 俺は必死に雑誌を探した。
 教壇、机の中、ロッカー、掃除用具といった教室にあるもの
すべて確認した。

 だが、なかった。

「あったか?」

「ない。ほんとにあるの?ここに」

「ある。だって、ここで雑誌広げてたのは間
違いないから」

俺がそう言った後、友は呆れたように言う。

「分かった。分かった。じゃあ、もう一回探
してみるか」

 友が返事した後、教室のドアが急に開いた

 俺たちは身構えって何ごともないように、お
互い向き合いながら席に座って、下を俯いて
いた。

 すると、誰かが俺たちの近くにやってきた。

チラッと上を見上げたら、誰かが俺たちの前
で立っていた。

「これ、あなた達の?」

「え?」

 友が声を発して、誰かを見る。

「これ」

 そう言ってから、机に探していた雑誌を置
いた。

「あー!!」

 俺は立ち上がり、その雑誌を指差した。

それは、学年人気ナンバーワンの夏夜だった。

「あ、やっぱりあなた達なんだ」

 無表情で俺たちの前に立ちはだかる。