「……私から話があるんだけど。いい?」
辻本さんはいきなり立ち上がり、俺に言う。
「いいよ。なに?」
俺は座ったまま辻本さんの話を聞く。
「ほんとはアイドルなんてどうでもいい」
辻本さんは俺に動揺させる言い方で聞いて
くる。
「はあ?え?アイドル興味持たせてと言った
のはどこの誰かわかってる?」
俺は目を泳がせ、辻本さんに言う。
「うん。私だけど。それはただの口実。それ
じゃ分からない?」
辻本さんは俺に近づいてきた。
「……分からない」
俺は目の前にいる辻本さんをただ見つめた。
「じゃあ、これでどう?好き」
辻本さんは、俺の顔に至近距離で近付きな
がら、言った。
「え?」
「だから、好きだって言ってんの!?」
「な、なんで俺なんかを」
「私は恋愛しか興味ない。だけど、前にも言
ったけど、あなた達が羨ましかった。偽りの
ない友人関係、楽しそうに好きなことを話す。
そんな姿を見て、惹かれたし。友くんと話す
あんたは良かったから」
「え?いや信じられないんだけど」
俺は混乱した。そんなのあり得ないことだ
から。
地味男子と人気者がなんでと。
「そんなの想定内済。だから、最初はアイド
ルフアン活動の仲間から始めましょう!」
辻本さんはにこりと笑ってから、俺から離
れた。
「いや、俺の意見は?」
俺は自分指しながら、辻本さんに聞く。
「ない。私のこともう好きになってるから」
辻本さんははっきりと口にする。
「恋愛とか分からないし。辻本さんを好きか
は」
俺は思ったことを言葉に表す。
しかし、辻本さんに通じない。
「…好きにさせるわよ」
辻本さんは俺の話なんて聞かないで、俺を
抱きしめてきた。
俺は何がなんだか分からず、ただ呆然とし
た。
「なんなんだよ。これ!」
屋上にいる俺はとにかく学校では大きい声
を出さないのに今日初めて出した。
辻本さんは俺の気持ちをよそに、満面な笑
みで笑っていた。
一体、どうなる、俺!