「だな。あ、そういえば今日女子でアイドル
興味ない子いたわ」

 俺は友にそう言って、リモコンを持って操作をしていた。

 流れてくる音楽をただ聴いていた。

「珍しい。そんな子いるんだ。名前はなんっ
ていうの?」

 友はソファーに座り、スマホをいじりながら、俺の話を聞いていた。

「夏夜って子」

 俺は真剣にテレビ画面を見つめて、友に言う。

「その子、学年で人気者の夏夜ちゃんでしょ」

友は目を丸くして俺に言う。

「そうなの。知らない」

 俺はソファーの近くでテレビ画面を一時停止して、カバンからスマホを出し友に発する。

「人気者だよ。男女問わず好かれているし、
なんたって可愛い」

 友はそう言っていたが、女子はみんな同じ
に見えて何とも言えない。

「ふーん」

 ただ俺は友に返事をした。

「…まぁ、お前は興味ないか。っていうか秋斗は眼鏡外せばモテるよな」

 友は俺にそう言ってから、近づいてきた。

「え?いやいや。こんなアイドルオタク」

 俺はそう言って、顔まで近づけ、眼鏡をクイッとあげた。

「やっぱ、顔立ちはいいのにもったいない。
まあ、そうだよな。じゃあ、続きするか?」

俺から離れたあと、リモコンを持って友は言ってきた。

「だな。するか」

 俺はまたペンライトを持って、友に返事をして、また1時間ほど盛り上がった。

 翌日

 俺は学校に来て、自分の机でアイドル雑誌
を見ていた。

 教科書を外に向け、雑誌を教科書の中に入れて隠して読んだ。

それは、俺が推している男性アイドルグループ「炎」の隼也(はやなり)。

ひなちゃんも好きだけど、隼也も好きだ。
そして、今日は隼也の誕生日なのだ。

だから、今日は学校に持ってきた。

本当は家で見ろよと突っ込むかもしれないが、1分1秒でも見ていたいのはアイドルオタクだから。アイドルオタクの人なら分かってくれるだろう。

こんな特別な日こそ、雑誌を読んでお祝いしたい。

 地味オタク男子は必ずしも真面目ではない。

 そんな時、クラスメイトが大きい声で生徒
たちに言う。

「みんな。次、移動教室だって。急げ」

 クラスメイトが焦って言っていたからか、友は急いで俺の元へ来て、言う。

「早くしないと送れるよ。秋斗」

 友はそう言いながら、さっきに行こうとし
ていた。

「待ってよ。友」

 雑誌を見た後、俺は友に言い放ち、机にあ
った教科書などを急いで持ち、科学室へ走っ
た。

 その時、急いでいて気付かなかったが、さ
っきまで見ていた男性アイドル雑誌が落ちて
しまった。

「これ」

 誰かが男性アイドル雑誌を片手に持って、
誰もいない教室で一人呟いていた。

「あっ、え?ないない。なんで」

 俺は授業・掃除が終わってから、自分のカ
バンを漁っていた。

「どうしたの?秋斗」

 それを見た友は、俺に不思議そうに聞いて
くる。

「ないんだよ!あれが!」

 俺は必死でカバンを右手でいれてから、鞄
を逆さまにして、机の上に持ち物を広げた。

「え?なんだよ」

 友は俺が何をしているのか分からずに、呆
然と俺を見てきた。

「アイドル雑誌」

 俺は小声で友に言う。

「え?なんだって」 

 友は、俺の声が聞こえなかったのか再度俺
に聞いてくる。

「雑誌!」

 少し大きい声で俺は友に言う。
それを聞いた友は目を丸くさせていた。