あれ?辻本さん。
なんで!
「……あっ」
アイドルファン活動では、俺は忘れてしま
う程食いついてしまうので、現状の理解が出
来ていない。
そして、考えて、思い出した。
「秋斗。大丈夫か」
友は俺が心配になったのか聞いてきた。
「…あ、そうだよな。あはは」
俺は苦笑いを浮かべて、辻本さんを見た。
「…ビックリした」
そう一言だけ辻本さんが言うと、俺をじっ
と見てきた。
「……っ」
俺は手で顔を隠した。
顔が赤くなったからだ。
「秋斗。何照れてんの。今更だよ。2時間ず
っとフアン活動してたんだから」
「いや、そうだけど。こんな自分友以外に見
せたことないから恥ずかしいんだよ。友はな
んで普通に出来んだよ!」
俺は両手を顔で隠して、しゃがみ込んだ。
「…僕だって恥ずかしいよ。でも、僕たちは
こういう人間なんだから。恥ずかしくしても
仕方ないだろ」
確かに。友は恥ずかしそうにしていた。
だけど、俺ほどではない。
「……でも、良かったと思うよ」
辻本さんは、ポツリと声を発した。
「え?何が。どこがよかったの?」
友は驚いた様子で辻本さんに前のめりで聞
く。
「…こんなにハマるのすごいなと」
「…そうなんだ!聞いた!人気者の夏夜ちゃ
んからこんなお言葉が。まさにひなちゃんだ
よね」
友は興奮しながら、俺と辻本さんに言う。
「……良かったな。俺、ちょっと買い物行っ
てくるから」
俺は苦笑いを浮かべてから、靴を履き、外
に出た。
「え?秋斗!待ってよ」
友は目を丸くして、俺に言う。
「友くん。私、行ってくるから」
辻本さんは、鞄を持って靴を履き外に出た。
「…今、友くんって言った?夏夜ちゃん!」
友は右膝に床をつけてから、悲しんでいた。
だが、辻本さんは無視して、出て行った。
「はあ、なんかな。何のためにやってんだろ
う。アイドル好きでフアン活動してるのはい
いけど、なんだかな」
俺は独り言を呟いた。
すると、後ろから声が聞こえた。
「杉本くん」
「え?…辻本さん」
いきなり、俺の名字を呼ぶ声が聞こえたので、
ビックリした。
「ど、どうしたの?」
俺は後ろを振り返り、辻本さんに聞いた。
「私、アイドルなんて興味ないわよ」
辻本さんはいつもの元気良さはなくなり、
下に俯いついた。
「…知ってるけど」
辻本さんがアイドル興味がないって言うの
は今更だ。
なのに、なんで報告してくるんだ。
疑問に思いながら、首を傾げた。
「……でも、あんたには興味あるわ」
辻本さんは、俺と真正面で向き合う。
「はあ?え?」
俺は予想だにしない答えに困惑する。
「……分かってよ!」
辻本さんは、いきなり大きい声を出して、
俺に言う。
「…え?はあ?」
俺は目を丸くして、じっと辻本さんを見る。
「明日までだからね。アイドル活動フアン
は!」
辻本さんはビシッと私に指を差してくる。
「はあ?」
俺は呆然として、辻本さんが走っていく姿
を見ていた。
それから、アイドルを興味持たせる為の講
座は、明日で最後だ。
辻本さんは、一体何を考えてるのだろう。
俺は知る由はなかった。
アイドルを興味持たせる為の講座は、そう
いうことだということに。
恋愛好きな考え方は、全く分からなかった。