その姿を見て、何も言えなくなった。

 友がここまでだと、俺は逆らえない。

「…あなた達のフアン活動は見てみたいな」

 追い討ちをかけるかのように辻本さんは友が
嬉しい返答をする。

 俺は呆然とした。

 心の中で叫んだ。

 いやいや、ないない。

 なんで辻本さんの前でやらないといけない。
 アイドルを興味持たせる為とはいえ、人に
お見せできない。

 断じて、お断りしたい。

「それだけはちょっと」

 俺は戸惑い、返答した。

 断ったのに、友は逆の答えが返ってきた。

「じゃあ、やろう。秋斗。こっち」

 友は俺の言葉なんて無視して、見ようと誘
ってくる。

「いや、俺はやらないって」

 俺は拒否して友に返答する。

「はい。じゃあ、DVD、デスクに入れたから。
はい、始めるよ」

 だから、俺はやらないって!!

 もう、無理だ。やるしかない。

 友がこうなったら誰も止められない。

「…やろう。もうやるしかないんだろう」

 俺ははあーとため息をついてから、友に言
う。

「ありがとう。秋斗」

 ニンマリと笑顔を浮かべた後、リモコンを
操作し始めた。

 友は俺が聞くことわかって、そういう風に
しているのは分かるからこそ、なんとも言え
ない。

 リモコン操作を終えて、DVDのホーム画面
が現れる。

 そして、近くにあったペンライトを俺と友
は持ち、フアン活動が始まる。

「夏夜ちゃん。行くからね。ついて来れなく
ても、見てるだけでいいから」

 友は笑顔で辻本さんに話しかける。

 辻本さんは返事をして、俺たちを見る。

「じゃあ、準備オッケー?」

 友は俺に聞いてきた。

 そして、友は辻本さんに耳をすまして、何
かを言っていた。

「ああ。オッケー」

 疑問に思いながら、俺は返事する。
 辻本さんは、楽しみにしているのかニコニ
コな感じがした。

 もちろん、俺は心の中で嫌だと拒否反応を
示すが、アイドルのDVDが流れると一変する。

「行くぜ!あいあい!おいおい」

 俺は画面越しにいるアイドル達に叫んだ。

 辻本さんがいるが、そんなの気にしない。

 もう、どうにでもなれ!

「ひなちゃーん!」

 友もフアン活動の時のいつものテンション
で、ペンライトを持って騒ぎ始めた。

「隼也!隼也!おいおい」

 俺も叫んで、ペンライト振って、叫んでを
繰り返した。

 これを二時間行うと、俺は我に返る。