「……今回はどうやってアイドル興味持たせ
てくれるの?」

 辻本さんは、昨日と同じことを聞いてくる。
まあ、そうだよな。

 いつアイドルを興味持たせるための集まり
は決まってないし。

「え?あー、そっか。まだ今日やってなかっ
たか。今日はこの部屋でグッズとか使いなが
ら、説明するから。友来てからの方が面白く
なるかもだから」

 俺は後ろを振り返り、辻本さんに言う。

「優しいんだね、二人とも」

 唐突に俺に辻本さんが言う。

「いきなり、どうしたの」

 俺は辻本さんに聞いた。

「アイドルは興味ない。でも、信頼している
友達がいるのはいいことだよね」

 辻本さんは、本音を俺に呟く。

「それは、俺と友のこと」

 俺は雑誌コーナーから2冊ほど出してから、
小さいテーブルの近くに床に座った。

「そう。私は羨ましいよ」

 辻本さんは正座をして、下に俯きながら答
える。

「だったら、俺は辻本さんの方が羨ましい。
俺は地味だし、オタクだし、友達も少ないし」

 俺は自分自身を自虐しながら、辻本さんが
羨ましいことを言う。

「確かにそうね。でも、私にないもの持って
いいと思う」

 俺の自虐を肯定しながら、辻本さんは背中
を真っ直ぐにして答えてくれた。

「辻本さん」

 そんなことを思ってくれたことに嬉しさを
感じた。

「だけど、アイドルだけはどうしても好きに
なれないわ」

 感動したのは束の間、辻本さんはアイドル
に対して、文句を言ってくる。

「はあ?今感動してたのに。何。アイドル好
きになれない。逆になぜ好きになれない」

 俺は肩を落として、辻本さんに発する。

「前見た雑誌の人は好きだけど。よく分から
ないけど、なんか無理」

 さっきのは幻だったんじゃないかってくら
いアイドルに興味がないことだけは改めて分
かった。 

「無理だ? まだ、アイドル興味持たせる為
のレッスンは昨日だけしかやってないからだ
ろう。興味持ちたいなら、諦めんな」

 俺は、アイドルに対して一貫して興味がな
いと言うので、声を少し大きい声で発し辻本
さんに発言する。

 前まではあり得ないことだ。

ただ、教室の隅にいて、同じ趣味を持ってい
る友と話すことが日常だった。

 それが、人気者の辻本夏夜が普通に俺たち
といることが不思議にならなくなった。

「こっちは好きでやってんの。興味持たせる
為なら努力しなさいよ」