俺は嫌な顔して、友に反論する。

「いいから、いいから。行きましょう」

 友は俺の言葉なんて無視して、勝手にフア
ン活動部屋に連れて行こうとした。

「いやいや。それは…」

 そんな友を見て止めたが、こうなった友は
言うことは聞かないので、諦めた。

 俺は心の中で叫んだ。

 えー!なんで!!
 俺は頭を抱えて、友と辻本さんに着いてい
た。

 俺たちは授業をサボって15分ほど歩いて、
フアン活動部屋に行った。

「へぇ。こんな感じなんだ」

 部屋に着くと、辻本さんは上を見上げて、
キョロキョロしていた。

「まだ、地味な方なんだけどね。もっとアイ
ドルグッズ増やしていきたいと思うし」

 友は近くにあるソファーにジャンバーとカ
バンを放り投げて、辻本さんに言う。

「これでまだ増やすの。もう十分だと思うん
だけど」

「…いや、まだまだだよな、秋斗」

「ああ。そうだな」

「つれない顔して、夏夜ちゃんがいるからか」

「……違うから。ここは俺と友だけの秘密基
地みたいなもんだ。だから、まだアイドルに
興味持ってない奴に部屋連れて行くのはどう
かと思ってんの」 

 俺は立ちすくみ、辻本さんと友に言い放つ。

「…僕は夏夜ちゃんがアイドルに興味持って
ないからこそ。連れてきたんだよ。僕はただ
単に興味持ってほしいから」

 俺は友の考えは、分からないことはない。
 でも、連れてきただけで興味を持つとは限
らない。

「……わかった。でも、この部屋散
らかすなよ」

「…ありがとう!秋斗」

 ガバッと俺を抱きしめて、微笑んだ。

「止めろよ。離せて」

 恥ずかしそうに俺は友の背中をバンっと叩
いた。

「仲、いいね」

「…そんなことないから」

 俺はそっぽを向いて、照れた。

「あ、そうだ。僕、買い物あるんだった。秋
斗と夏夜ちゃんは待っててね」

「え?おい」

 俺が呼びかけると、友はウィンクをして靴
を履き出て行ってしまった。

 友。わざと、二人きりにしたな。

 辻本さんとはなんともないのに。

 友が行ってから、沈黙が流れた。

 意を決して、俺は辻本さんに話しかける。

「…この部屋にあるもの、見てみる?」

「そうだね。見たいかな」

 辻本さんは床にカバンを置いてから、ソフ
ァーの近くに座って俺に言う。

「じゃあ、これはどうかな」

 俺はアイドル雑誌コーナーを漁り、初心者
向け用の雑誌を探す。