現実の恋愛はご無沙汰。
女子との会話に合わせるため、恋愛話をし
ているだけなのか。
「ということは、妄想好きなだけ?」
「…違う!断じて。私はただこのアイドルが
タイプなだけ。恋愛は、戦争。お互いが秘め
ている想いを地道に伝えていく。伝えられな
かった場合はもがくけど、諦めないことが大
切なの」
いきなり立ち上がり、俺に勢いよく言って
くる。
「……辻本さんは、恋愛好きなんだね。俺と
一緒だよね」
俺は思ったことを口にすると、ギロッと睨
んできた。
「…はあ?一緒にしないで。私はアイドルな
んて興味ないから!!」
そう言ってから、バンっと屋上の扉を開け
て、出て行った。
えー!?
まだ、全然説明できていないんだけど。
まあ、いいか。
それから、俺は友がいる教室へ戻ろうとし
たが、なんとなく俺は少し横になってから教
室へ戻った。
アイドルを興味持たせるためにやることは、
ただひとつ。
どういう風に好きなのか。何がいいのか。
などを伝えることが大切だと思う。
辻本さんは恋愛しか興味ないと言うが、今
日で分かった。
伝えれば分かるということを。
*
「はあ。何してんだろう」
私は、屋上の扉を開けて去った後、扉の前
にしゃがみ込むように座った。
なんで、恋愛しか興味がない私が杉山秋斗
のアイドルについて、話を聞いているのは訳
がある。
クラスが一緒だけど話す機会がなく、杉本
秋斗は地味男子でクラスから浮いていた。
だけど、仲のいい友人と素で話をしていて、
私は羨ましかった。
男子だけど、あそこの空間だけは光ってい
た。
学内で人気ナンバーワンと言われているが、
大したことはない。
至って、普通の女子とは変わらない。
友達と話すのは、恋愛ばかりだったから。
本などで知識を増やして、恋愛好きと友人達
に言い、明るく話す程度の関係。
それは表面上は仲良くはない。
でも、そんな時。
杉本秋斗は、何か話をしていたんだろう。
前髪と眼鏡で目元は隠れていたが、ほんの
少し口元が笑った気がした。
地味で目立たなくて、クラスに馴染んでい
ないけど、私には光っていたんだ。
何が興味あるなんてどうでもよかった。
あの時、アイドル雑誌を拾って、彼と話す
ことは出来たのは嬉しかった。
だから、彼に挑発するような口調で言って、わざと彼に興味持たせるよと言わせた。
彼はそんなことなんて微塵も感じてないだろうけど。
恋愛好きは恋愛好きだから、はっきりアイドルなんて興味はないけど、彼には興味があるのは本当の話。