「ナオさんの誕生花はなんでしたっけ?」

 「ユーストマとゼラニウム。ゼラニウムはどこかにあるかもしれないね」

 「ゼラニウムには、なにか面白い話ないんですか?」

 「洗濯がどうのって……」と、ナオさんは曖昧に言う。「ああそう。ムハンマドが、ある日シャツを洗濯した後、近くにあった植物に掛けて乾かそうとしたと。すると、シャツが乾くまでの間に、その植物が赤いゼラニウムに変わってたっていう話が」

 「へええ。乾かないうちに変わったんじゃあ、そのシャツはさぞいい匂いになったでしょうね」

 「バラみたいな匂いだよね。紅茶とかジャムの香りづけにも使われるとか」

 「あんな匂いの香水とかほしいです」

 「そういうのもあるみたいだよね」

 「へえ、今度探してみよう」

 「精油は高級なものみたいだよ」

 「え、そうなんですか」