暫くして。
「スカート捲りの事だけど――」
徐に切り出した一森に対して、太田川の心臓が大きく跳ねた。
「そ、そんなのもう、やらないから!」
「うん。私も、太田川君が他の子にそういう事するのはイヤ。でも、もし、どうしても我慢できなくなったら……」
「できなくなったら?」
顔どころか耳の先まで真っ赤にしながら、一森が上目遣いで、控え目に言う。
「……たまにだったら、私にしても……いいよ?」
妙に色っぽい仕草と表情の一森にドキッとしたものの、直後に彼女から極大の羞恥心を感じた太田川は――
「ヤバい! トイレ!」
急速に膨れ上がる尿意を感じて、焦る。
しかし、トランクスとズボンはまだ乾かしている最中で――
「それなら、布団を腰に巻いて……の長距離移動も、よく考えたら無理があるな……」
「じゃあ、枕はどう?」
「そうそう、この枕で股間を隠して……って、後ろから丸見えだよ! 何どさくさに紛れてトンデモ提案しちゃってるの!? 一森さん!?」
「クスッ。ごめんなさい」
悪戯っぽく笑う一森に、太田川も一瞬尿意を忘れて微笑む。
「っていうか、一森さんって、結構喋るんだね。冗談も言うし。勝手に寡黙な子だと思い込んでた」
「太田川君は、寡黙な子の方が好き?」
「いや、たくさん喋ってくれて嬉しいよ」
その言葉に、一森は胸を撫で下ろす。
「良かった。私、恥ずかしがり屋だけど、太田川君とたくさん仲良くしたいなって思ってたの。デートとかして、手を繋いだりしても良い?」
「も、勿論良いよ! 大歓迎さ!」
デート中の二人、という甘美なイメージが頭の中に広がり、太田川の声が上擦る。
「多分、嬉しい気持ちと同時に、私、恥ずかしい気持ちも感じちゃうから、太田川君、毎回大変だよ? それでも良いの?」
「えっと、その度に多分、トイレに駆け込む僕がいるけど、それでも良いなら」
「全然平気。私、ちゃんと待ってるから。じゃあ、たくさん仲良くしようね」
「うん、楽しみだ」
見詰め合う二人。ロマンティックな雰囲気が流れる。
――が。
「ああ! 限界だ!」
どうやら、自分からデートの話や手を繋ぐ話を振って、更に恥ずかしさを感じたらしい一森の羞恥心を感じ取り、太田川の膀胱が破裂寸前にまで追い詰められる。
「やっぱ、これっきゃない!」
布団を腰に巻き付けつつベッドを下りた太田川は、トランクスとズボンをハンガーから取って、一森からは見えないように、器用に穿く。
「冷たい! けど、これで行くしかないし! 行ってきます!」
「うん、行ってらっしゃい。怪我してるんだから、気を付けてね」
免疫力が向上して艶々した肌で微笑む一森に見送られながら、太田川はいつものように、自身の身体に衝撃が無いように、音も無く廊下を走って、歯を食い縛りつつトイレへと駆け込んで行った。
※―※―※
この日。
人一倍恥ずかしがり屋の癖に、デートの度に自分からイチャイチャして赤面する少女と、その少女にイチャイチャされる度にトイレに駆け込む少年という、不思議なカップルが誕生した。
―完―
「スカート捲りの事だけど――」
徐に切り出した一森に対して、太田川の心臓が大きく跳ねた。
「そ、そんなのもう、やらないから!」
「うん。私も、太田川君が他の子にそういう事するのはイヤ。でも、もし、どうしても我慢できなくなったら……」
「できなくなったら?」
顔どころか耳の先まで真っ赤にしながら、一森が上目遣いで、控え目に言う。
「……たまにだったら、私にしても……いいよ?」
妙に色っぽい仕草と表情の一森にドキッとしたものの、直後に彼女から極大の羞恥心を感じた太田川は――
「ヤバい! トイレ!」
急速に膨れ上がる尿意を感じて、焦る。
しかし、トランクスとズボンはまだ乾かしている最中で――
「それなら、布団を腰に巻いて……の長距離移動も、よく考えたら無理があるな……」
「じゃあ、枕はどう?」
「そうそう、この枕で股間を隠して……って、後ろから丸見えだよ! 何どさくさに紛れてトンデモ提案しちゃってるの!? 一森さん!?」
「クスッ。ごめんなさい」
悪戯っぽく笑う一森に、太田川も一瞬尿意を忘れて微笑む。
「っていうか、一森さんって、結構喋るんだね。冗談も言うし。勝手に寡黙な子だと思い込んでた」
「太田川君は、寡黙な子の方が好き?」
「いや、たくさん喋ってくれて嬉しいよ」
その言葉に、一森は胸を撫で下ろす。
「良かった。私、恥ずかしがり屋だけど、太田川君とたくさん仲良くしたいなって思ってたの。デートとかして、手を繋いだりしても良い?」
「も、勿論良いよ! 大歓迎さ!」
デート中の二人、という甘美なイメージが頭の中に広がり、太田川の声が上擦る。
「多分、嬉しい気持ちと同時に、私、恥ずかしい気持ちも感じちゃうから、太田川君、毎回大変だよ? それでも良いの?」
「えっと、その度に多分、トイレに駆け込む僕がいるけど、それでも良いなら」
「全然平気。私、ちゃんと待ってるから。じゃあ、たくさん仲良くしようね」
「うん、楽しみだ」
見詰め合う二人。ロマンティックな雰囲気が流れる。
――が。
「ああ! 限界だ!」
どうやら、自分からデートの話や手を繋ぐ話を振って、更に恥ずかしさを感じたらしい一森の羞恥心を感じ取り、太田川の膀胱が破裂寸前にまで追い詰められる。
「やっぱ、これっきゃない!」
布団を腰に巻き付けつつベッドを下りた太田川は、トランクスとズボンをハンガーから取って、一森からは見えないように、器用に穿く。
「冷たい! けど、これで行くしかないし! 行ってきます!」
「うん、行ってらっしゃい。怪我してるんだから、気を付けてね」
免疫力が向上して艶々した肌で微笑む一森に見送られながら、太田川はいつものように、自身の身体に衝撃が無いように、音も無く廊下を走って、歯を食い縛りつつトイレへと駆け込んで行った。
※―※―※
この日。
人一倍恥ずかしがり屋の癖に、デートの度に自分からイチャイチャして赤面する少女と、その少女にイチャイチャされる度にトイレに駆け込む少年という、不思議なカップルが誕生した。
―完―