テーブルには、半分ほど減った生中2つと、焼き鳥などのおつまみが数品並んでいた。
そういえば……希美は桃也くんとも仲良しで、バイト中もよく冗談を言い合っていたのを思い出した。
「凛乃も頼んで頼んでっ」
希美が鼻歌を歌いながら差し出してくれたメニューにさらりと目を通し、私も二人と同じ生中を頼んだ。
「じゃあ改めまして。かんぱーい!」
ゴツッ、と重たいジョッキの音が鳴り、私はごくごくと、3分の1ほどいっきに飲んだ。
「キャー! 凛乃ってば、見た目によらず豪快ね」
「そうかな?」
希美、だいぶ出来上がってる。
言われて思い返せば、生中を美味しいって感じるようになったのは圭の影響だった……。
「凛乃、元気だったー? 前に会ったの7月だったね。もう9月なんて年越しちゃう、老けちゃう」
「ふふ、希美酔すぎてる? 夏以来だから久しぶりだね。元気にしてるよ」
「良かったあ。言わなかったけど、前に会った時は随分痩せちゃってて心配してたの。今は顔色もいいね!」
「そう……だったかな。あはは」
わざとらしい笑いを付け足してから、目の前にある枝豆に手を伸ばした。
「久しぶりだね、凛乃ちゃん」
視線は感じていたものの、なかなか合わせられずにいた。目の前の焼き鳥からそっと視線を上げていくと、爽やかに微笑みかけてくれている、桃也くん。
緊張していたはずなのに、その笑顔に思わずほっとした。
「すごく久しぶりだね、桃也くん」
圭と付き合っていた頃、桃也くんも一緒に3人でよく遊んでいた。
かっこいいのに彼女がいなくて、特定の彼女は持たない主義なのかな、と勝手な妄想をしちゃったことがある。
でも、圭が警察学校に入校し、桃也くんが就職をしてからはそれぞれ忙しくて、私は会う機会がなくなっていた。
私、今どんな顔をしてるだろう。
心の準備をする間もなく、圭に直接繋っている桃也くんと何を話したらいいの。動揺を隠せない。
圭は、私のことをなんて話したんだろう……。
「ははっ! 凛乃ちゃん。そんなあからさまに気まずい顔しないで」
「あっ、えと。そんなつもりは……」
「あるよね?」
「ごめんね、少し」
また、ははと笑う桃也くんにつられて、希美はケラケラ笑い、私も少しだけ笑った。
そっか。こうゆう人だった、と瞬時に思い出した。
私は、常に自分に厳しく、曲がったことが嫌いな圭に相応しくいられるよう、いつも神経を尖らせていた。
でも、桃也くんが自然体でそこにいるだけで、いつも場の空気が和んでいた。それはまるでマイナスイオンでも放出されていたかのように。