思えばあの頃の私は、自分の事ばかりだった。
辛くて、辛くて、辛くて、底知れない傷はひとりじゃ埋められなかった。
この道も、あのお店も、
クローゼットの中の服も、
自炊した料理でさえも、
目に映るもの全てが、匂いが、音が、
私にあなたを思い出させて。
あなたが染み付き過ぎちゃってたね。
でも、それほど好きだったし、歳をとってもずっと一緒にいるんだと、信じて疑わなかったの。
乗り越えようともせずに現実から目を逸らして、真面目に生きることにも疲れて……あなたが知ったら、幻滅しただろうね。
“本当のこと”なんて、あなたの辛さなんて知りもせず、自分だけが谷底に突き落とされた気持ちだったの。
ごめんね。