私は、外交官だ。

今、スムタットと言う国に来ている。

なんでも、この国ではオレンジが沢山採れるらしい。

自分たちの国でもオレンジは作られてはいるが、そんなに沢山は作ってはいないし、そんなに味も美味しいとは言えない。不味くはないが美味しいとも言い切れない、なんとも言いがたい味だ。

国王陛下は、スムタットのオレンジが大変美味しいらしいとどこからか聞いたらしく、私にスムタットのオレンジを我が国に輸出してくれないか交渉してきてくれと命令してきた。









「ようこそ!スムタットへ!

遥々、こんな国までよくいらっしゃいましたね。長旅でお疲れでしょうから、どうぞゆっくりお休みください。」

「お気遣いいただき、ありがとうございます。では、お言葉に甘えて少し休憩させていただきますね。」

「どうぞ、ごゆっくり。」

バタンッ。

私は、用意していただいた部屋のドアを閉めた。

そして、2ヶ月かけてやっと早朝にスムタットに着いた私は、もう一眠りしようとベットに沈んだ。









コンコンッ!コンコンッ!

「うーん…むにゃむにゃ…。」

コンコンッ!コンコンッ!コンコンッ!コンコンッ!

「「コンコンッ!コンコンッ!うるせーよ!キツネか!!」」



ドアの方から声が聞こえてきた。

「寝ているところ、起こしてしまい申し訳ございません。お昼ごはんができましたので、お呼びさせていただきました。」

「そうでしたか。こちらこそ、大きな声を出してしまい、大変申し訳ございませんでした。」

そして、食堂に向かった。

テーブルには、沢山のご馳走が並んでいた。

「なんて、美味しいんだ!!」

「気に入っていただけて良かったです!

オレンジを使ったデザートもありますので、お召し上がりください。」

デザートにオレンジのムース、オレンジのロールケーキ、オレンジのアイス、オレンジのサブレ、オレンジのゼリー、飲み物にオレンジジュースが出てきた。

「デザートも凄く美味しいです!!いやー、やっぱり別腹ってあるんだなぁー!!

いくらでも入っちゃうよねー!!」

「そうですか!喜んでいただき良かったです!ところで、こちらで採れるオレンジを貴国へ輸出してほしいという件ですが、オレンジを普通に輸出すると貴国へ運んでいる途中で腐ってしまうのでできませんね。

代わりに、オレンジを加工したジュースやドライオレンジやオレンジのキャンディーは、賞味期限が長いので5ヶ月は大丈夫ですよ。」

「そうですか。それでは、我が国に加工したオレンジの食品を輸出していただけますでしょうか?」

「いいですよ。こちらこそ、ぜひよろしくお願い致します。」

こうして、交渉は成立した。









までは良かったが、急に交渉が成立したら気が緩んでしまったのか、お腹が痛くなってしまい、痛さで倒れてしまい病院に運び込まれた。

「えーと、これは食べ過ぎですね。食べ過ぎでお腹が痛くなって、痛さで倒れてしまったみたいですね。

これは、一日寝たら治るはずなので病院のベッドでゆっくり休んでいてくださいね。」

「はい。分かりました。ありがとうございます。」

外交官は、医者にお礼を言った。

そして、ずっと病院のベッドで寝ていた。

そして、夜中になって目がパチッと開いた。

喉が渇いた。

喉が乾燥する。

喉がカラカラだ。

何か飲みたい。

喉が渇いては、眠ることもできない。

病院の食堂になにか飲み物があるはずだ。

ちょっと、食堂まで行ってみよう。

病室から抜け出し、廊下を歩いていく。

しかし、廊下はところどころ電気は点いてはいるが、電球が切れているのに新しいのと取り替えてくれていないところや、電気がチカチカとしているところもあり、結構怖い。

何か出るんじゃないかと不安になってきた。

しかし、戻るにしては来過ぎてしまった。

ここまで来たら、食堂までもう少しだ。

戻りたくはない。

また一歩、また一歩とおそるおそる進んで行く。

そして、飲み物を食堂で手に入れて帰って行った。

帰りは、飲み物を飲んで喉が潤って気分も良い。

足取りも軽い。

元来た道を帰るだけだ。

しかし、こちらに近づいてくる足音がした。

コツコツ、コツコツ。



ん?誰だろう?看護師さんかな?それとも、お医者様かな?と外交官は、考えた。

しかし、廊下に映った影は明らかに人間のものでは無かった。

その影は、獣のような大きな耳がついていて、口は狼のように大きな口に見えた。

もっと近くまで来た。

姿が見えた。

狼だ。狼が人間のように二足歩行で歩いて近づいてくる。

外交官は、逃げようと思った。

しかし、恐怖で体が動かない。

食べられる!!もうダメだ!!と思って、目をつぶった瞬間…

「こんなところで何をしてるんですか?」

と聞こえた。

目をおそるおそる開けてみると、狼が外交官の顔を覗き込んでいた。

「あなたは今日、食べ過ぎてお腹が痛くなって倒れて、ここに運ばれてきた患者さんですね。」

「え?何で知ってるの?」

思わず喋った。

「だって、私はあなたを今日診察した医者ですから、知ってて当たり前ですよ。」

「は?お前、狼じゃん!!」

「ああ!!そうだった!そうだった!

私は、人狼なんですよ。朝は人間の姿なのですが、夜は狼の姿になってしまうんですよ。」

「そんなやついるんか!?」

「鋭いツッコミありがとう。それが、いるんだよね。しょうがないから、諦めて現実を受け入れてよ。」





「何かあったんですか!?」

騒ぎを聞きつけて、みんな集まってくる。

しかし、これまたビックリ!!

集まったみんなは、全員狼の姿だ!!

「もしかして、皆さんも人狼でいらっしゃいますか?」

おそるおそる聞いてみる。

「はい。そうですよ。」

あっさり答えられた。

「この国に住んでいる者は皆、人狼ですよ。誰も、そのことを伝えてなかったのですね。誰か、伝えてくれたのかと思いました。」

外交官は、ショックで腰が抜けてしまい、本当は1日で退院できるはずだったのに、一週間延びてしまった。





               おわり。