見込み、かあ。こうやってお誘いもかかったんだし、なくはない、と思いたい。でも、私の気持ちに答えられるかはわからない、ってはっきり言われてるしなあ。
 はっきりしない私を見て、松田くんがまたにっこり笑った。
「俺も、一年の時からヒナのこと、いいなって思ってたんだ。別に彼氏がいないんだったら、立候補してもいいよな。俺のことも、視野に入れといてよ」
「ばっかじゃないの? あんたは他の頭軽そうな女と付き合ってたらいいでしょ。ヒナには手を出すな。ヒナ、あっち行こ!」
 私の代わりに啖呵を切って、愛香が私の手を掴んでぐいぐい引っ張っていく。戸惑いながら松田くんを見ると、こちらにひらひら手を振って笑っていた。
「あ、愛香? ちょっと待って」
「あいつはダメ。正真正銘の遊び人だから。あんたの手には負えない。……まったく、あんたそんなのにばっか捕まるわね」
 はあー、とため息をつくと、空いている席を見つけて、また店員さんを呼び止めてお酒を注文している。
「松田くんのあれ、冗談だよね?」
「冗談じゃないわよ、あいつ前からあんたのこと狙ってたんだから。私がガードしてあげてたの、わかってないでしょ?」
「そ、そうなの?」
「そうなの。あんた自分で思ってるより目立ってるんだからね。雑誌にも載ったし! ちょっとは気付け!」
 そんなこと言われても、声をかけられたことなんか一度もない。納得いかない顔をしている私を見て、愛香がもう一回、今度はわざとらしくため息をついた。
「あんなの気にしないで、あんたはそのカメラマンのことだけ考えてりゃいいの。水曜日、夕方からバイトでしょ」
 指摘されてはっとして、慌てて手帳を探る。愛香の言う通り、五時からのシフトに入ってしまっていた。
「愛香ぁ」
 泣きつく私に分かってるわよ、と言って、私の頭に手を置いた。
「その日、私は六時上がりのシフトだから、代わってあげる。その代わり」
 面白そうにニヤっと笑う愛香が、なんだか悪魔に見えた。
「何があったか、全部報告してもらうからね?」