言葉がわからない中で、沢木さんについて飛び回った二週間は、すごく充実していた。
大きな仕事が無事終わった安心感も重なって、最終日には早く優衣に会いたくて、日本までのフライトの時間が惜しく感じた。そんな時に限って運悪く、機械故障を起こしたとかで空港で何時間も待たされる。飛ぶのか飛ばないのかいい加減はっきりしろ、と乗客のイライラがピークに達したところでようやく搭乗手続きが始まった。
無事に成田に降り立ったのは結局、到着予定時刻から六時間も過ぎた頃だった。
ゲートを出て、携帯の電源を入れる。起動して驚いた。着信履歴が十九件。
慌てて履歴を開くと、初めの一件は優衣から、あとは全部理恵からだった。優衣からの着信が入った時間を見ると、午後二時五分。予定通りに行けば、この空港についているはずの時間だった。
嫌な予感がする。それもものすごく嫌な予感が。
理恵の着信を折り返す。三コール目で、理恵の声が聞こえた。
それから先のことを、実ははっきりとは覚えていない。
回らない頭の中で、片隅になんとか理性が残っていて、その場に最適な行動を取っていたらしい。気がついたら病院で、足が勝手にひとつの場所に向かっていた。
たどり着いたその部屋は、ひどく殺風景な部屋だった。がらんとした部屋にベッドが一つと、パイプ椅子が何個か置いてある。そのベッドの上に、誰かが横たわっている。
無意識に近づく。なぜか顔に白い布がかかっていて、誰かのいたずらにしては悪趣味だ、と思った。
自分の息が上がっていて、ああそうか、走ってきたんだ、ということを思い出す。でも、なんでそんなに急いできたんだっけ?
横たわる人影の、白い布を外す。そこに現れたのは、眠っている優衣の顔。
なんでこんなとこで寝ているんだろう。不思議に思って頬に触れると、その頬は異常なまでに冷たくて、思わず手を引っ込める。
大きな仕事が無事終わった安心感も重なって、最終日には早く優衣に会いたくて、日本までのフライトの時間が惜しく感じた。そんな時に限って運悪く、機械故障を起こしたとかで空港で何時間も待たされる。飛ぶのか飛ばないのかいい加減はっきりしろ、と乗客のイライラがピークに達したところでようやく搭乗手続きが始まった。
無事に成田に降り立ったのは結局、到着予定時刻から六時間も過ぎた頃だった。
ゲートを出て、携帯の電源を入れる。起動して驚いた。着信履歴が十九件。
慌てて履歴を開くと、初めの一件は優衣から、あとは全部理恵からだった。優衣からの着信が入った時間を見ると、午後二時五分。予定通りに行けば、この空港についているはずの時間だった。
嫌な予感がする。それもものすごく嫌な予感が。
理恵の着信を折り返す。三コール目で、理恵の声が聞こえた。
それから先のことを、実ははっきりとは覚えていない。
回らない頭の中で、片隅になんとか理性が残っていて、その場に最適な行動を取っていたらしい。気がついたら病院で、足が勝手にひとつの場所に向かっていた。
たどり着いたその部屋は、ひどく殺風景な部屋だった。がらんとした部屋にベッドが一つと、パイプ椅子が何個か置いてある。そのベッドの上に、誰かが横たわっている。
無意識に近づく。なぜか顔に白い布がかかっていて、誰かのいたずらにしては悪趣味だ、と思った。
自分の息が上がっていて、ああそうか、走ってきたんだ、ということを思い出す。でも、なんでそんなに急いできたんだっけ?
横たわる人影の、白い布を外す。そこに現れたのは、眠っている優衣の顔。
なんでこんなとこで寝ているんだろう。不思議に思って頬に触れると、その頬は異常なまでに冷たくて、思わず手を引っ込める。