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無事東京に引っ越して、それぞれの生活が始まった。
俺は新しい環境についていくので必死だった。何もかも分からない事だらけ、仕事は重労働で、時間も不規則。先輩に言われるがまま、あちこち走り回って、家に帰れば死んだように眠る。毎日がそれの繰り返し。
それでも、新しい知識を覚えていくのは楽しかった。先輩たちも気のいい人ばかりで、沢木さんは何かと気を遣ってくれる。毎日が刺激的で、俺は仕事にのめり込んでいった。
優衣は優衣で、新しい生活を満喫していた。もともと人懐こいほうだったし、新しい友達もすぐに作って、都会の生活をそれなりに楽しんでいたと思う。
主に俺に時間も金も無かったせいで、二人で会うのはもっぱらどちらかの家だった。優衣が食事を作って待っていてくれることもあったし、ごくたまに、俺が優衣の学校まで迎えに行くこともあった。
二人でいろんな話をした。お互い全く違う世界にいて、話題が尽きることはなかったし、尽きたとしても無言が居心地悪くなることはなかった。
季節が巡って、俺にも少し余裕ができて、優衣も東京での生活に馴染んで。たまに喧嘩をしたり、優衣の周りの学生たちに嫉妬したりもしたけれど、それでもお互いに歩み寄って、ちゃんと解決していった。
東京に出てきてから二年目、アシスタントも板についてきた俺は、沢木さんについていろんなところを駆け回るようになった。遠方の撮影にもついていくようになったし、アシスタントとしての働きもだんだん認めてもらえて、気が利く、と褒めてもらえることもあった。知識や経験が増えて、自分の写真もますます撮るのが楽しくなっていた。