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 ーー話したいことがあるから、三人で会えない?
 どことなく真剣な声で理恵から電話がかかってきたのは、八月に入ったばかりのクソ暑い日だった。梅雨がいつあけたのか曖昧なまま、いつの間にか太陽がガンガン照りつけて街中を炙っている。その日も雲一つない青空で、そんな日に限って外での撮影だった。脳みそが沸騰するんじゃないかと思うような炎天下で、僅かな木陰でさえ愛おしく思える。
 できれば今日にでも、という理恵に、無性にビールが飲みたい、と思っていた俺はすぐに了承した。どうせ飲むなら誰かと一緒の方がいい。
 待ち合わせたのは、よく三人で行く居酒屋だった。沢木さんと理恵が先に着いていて、二人の前には既に飲み物が置いてあった。沢木さんはビール、理恵は珍しく烏龍茶。
 挨拶もそこそこに、俺もビールを頼むと、簡単に乾杯する。干からびた魚みたいになっていた体に、アルコールが染み込んでいくのがわかる。沢木さんと会うのは久しぶりだった。前に回してもらった仕事で会った以来だから、三ヶ月ぶりくらいか。
「相変わらずガテン系にしか見えないですね。さらに黒くなってるし」
「お前だって日焼けしたんじゃねえか? 細いのは相変わらずだけどな」
 沢木さんに比べたら誰だって細いに決まってる。日焼けだって、今日一日で随分焼けたような気がするけど、何日かしたらすぐに元に戻る。昔からそういう体質なのだ。
「鍛えるのもほどほどにしとかないとカメラマンだって信じてもらえなくなりますよ」
 言ってろ、と笑う声が、なんとなくいつもより小さい気がする。そういえば理恵もなんだか元気がないようだ。
「お前体調でも悪いの? 烏龍茶なんか飲んで」
 理恵はザルだ。かぱかぱ水のようにグラスを空ける沢木さんと、平気で同じペースで飲む。
「体調が悪い、ってわけではないんだけど。ううん、ちょっと悪いのかな」
 いつもと違って歯切れが悪い。いつももっと遠慮しろよと言いたくなるくらいはっきり物を言うのに。
「話、ってなんか言いにくい話?」
 半分冗談で言ったのに、二人とも真顔になった。