「はい、オッケー。起き上がっていいよ。あと、どこ撮る?」
 理恵さんと話しながら、桐原さんが次こっち、と指示を出し、言われるがままリサさんとふたりで移動する。お部屋の中でひとしきりはしゃいだあとは館内を回って、お土産コーナーを見たり、ラウンジでおしゃべりしたりした。
 桐原さんは立ち位置とか顔の向きをたまに指示するだけで、あとはほんとに私とリサさんの好きなように動かせてくれた。リサさんはリサさんで撮られることに慣れていて、ヒナちゃんこっち、と誘導してくれたり、さりげなくカメラが追いやすいように動いていて、なんだかんだ言っても、やっぱりお仕事としてきちんとこなしていた。私も、ちゃんと考えて動けるようにならなくちゃ。
 次のロケ地のガラス工房は少し高台にあって、併設されたショップには色とりどりの硝子作品が並んでいた。グラスや花瓶から、ペンダントトップや指輪などのアクセサリー。リサさんとはしゃぎながらそれらを眺めて、アクセサリーは実際に付けさせてもらう。アクセサリーの撮影の時だけは、桐原さんの指示がちょっと細かくなって、顔の角度や場所をきっちり直された。光の加減とか、肌への映り方とか、撮り方一つで全然違うらしい。
 それまでの撮影が順調だったおかげで、最後のジェラート店ではのんびりすることができた。何種類もあるフレーバーの中から選び、お店の前のテラスでかぶりつく。季節のフルーツや地元のミルクを使ったジェラートは、素材の味が濃厚でめちゃくちゃ美味しい。
 撮影が終わった後は、理恵さんと桐原さんもそれぞれ自分のジェラートを選んで、四人で並んで食べた。女子三人はそれぞれ一口交換したりなんかして、わいわい楽しい。
「いいでしょ~、ガクさんにはあげな~い」
 リサさんがからかうように言うと、桐原さんも真似して言った。
「別にいらなーい」
「ふーんだ、ほんとは仲間にいれてほしいんでしょ? 素直じゃなーい」