でもなんで、いきなりライトが点いたんだろう……?
 その疑問に答えるように、遠くから声が聞こえた。
「ヒーナちゃーん! ガークさーん!」
 声のする方へ振り返ると、資料館の二階のベランダから、手を振っている人影が見えた。
 え? リサさん?
「おめでとー!」
 身を乗り出して叫ぶリサさんと、その周りを囲むように並んでいる人影が、みんな揃ってこっちを見ていた。
 愛香と小川さんはリサさんと一緒に手を振っていて、保志さんと宇野さんはその後ろで少し苦笑い。潤平くんは……仕方ないな、って顔で笑ってる。
 嘘、もしかしてみんなずっとそこにいたの?
「一緒にいたの、リサちゃんだけじゃなかったんだ」
「全部聞かれてたのかな」
「これだけ離れてたら声は聞こえないだろうけど。見てはいただろうね」
 桐原さんもなんだか決まりの悪そうな顔をしてリサさんたちを見ている。
 西さんはどこへ、と思ったら、リサさんが下に向かって何かを合図したのが見えて、その瞬間にぱっとライトが消えた。そういえば、イベントの設営の手伝いに行ってたって……もしかして勝手に動かしたの?
 また外灯の薄明かりだけに戻った中で、お互いの顔を見合わせて、私たちは同時に笑い出した。
「さすがリサさんっ」
「やられたな」
 至近距離でくすくす笑い合う。もう一度資料館のほうを見ると、もうみんなの姿はなかった。どうやって勝手に入ったんだろう、あとで怒られなきゃいいけど。
 どちらからともなくまた顔を寄せ合って、キスをする。今まであんなに遠く感じていた距離が、一気に近くなる。おでこをくっつけたまま、精一杯の気持ちを込めて囁いた。
「大好き」