そんな思いを抱えたまま、ずっと誰とも関わらないようにしてきたんだろうか。もしかしたら今までにも、幸せにしたいと思える人に出会っていたのかもしれない。でもそうやって身を引いてきたのだとしたら、悲しすぎる。
「今日、優衣のお父さんに言われたんだ。優衣はち幸せだった。もう自分を責めるな、自由になれ、って」
 桐原さんが誰も幸せにできないなんて、そんなことは絶対ない。だって私は、一緒にいるときすごくすごく幸せだった。彼の周りの人達が、みんな彼の幸せを祈っているのだって、きっと彼に幸せをもらえているからだと思う。
 そんな人に愛されて、優衣さんが不幸だったわけがない。
「自分で自分を許したいと思えて、ちゃんと優衣の死を納得して、悲しむことができて。思い浮かんだのが日南子ちゃんの顔だった」
 ――え?
「初めて会った時、優衣に似てるな、って思ったんだ。素直に気持ちを表に出して、表情がくるくる変わって。だから正直、初めはあんまり関わりたくなかった。でもだんだん、君の真っ直ぐさに惹かれていって……その強さが、眩しかった」
 桐原さんの言葉が、心にゆっくり染み渡っていく。気付けば頬が濡れていた。
 いつの間にか私は、泣いていた。
「こんなに真っ直ぐにぶつかってきてくれる子は初めてだったんだ。何度も何度も離れよう、君を幸せにしてくれる人は他にいる、って思いこもうとしたんだけどできなくて、ずっと君のことが頭から離れなかった」
 涙があとからあとから流れてくる。そんな風に思ってくれていたなんて、知らなかった。
「逃げんのやめなきゃ、って前にも言ったと思うけど、そう思わせてくれたのは君が初めてだ。俺に前を向かせてくれたのは、君だよ」
 私なんて、ただ自分の気持ちを押し付けていただけで、こんな風に言ってもらえることはなにもしていない。
 過去を乗り越えたのは、全部、彼自身の力だ。