そのあと、店長さんからの卒業祝い、と大きなホールケーキが出てきて、女子全員で歓声をあげた。みんなで崩して食べて、最後に上に乗ったプレートチョコを誰が食べるかで争奪戦をする。じゃんけん勝ち抜き戦で勝った保志さんが愛香に食べさせようとして、愛香が逃げ回ったせいで粉々に割れて、結局みんなで分け合って食べた。くだらないことで大笑いして、騒ぎ倒す。
「あー、そろそろ野乃花がやばいかも」
 西さんの声で小川さんの方を見ると、すでにすうすう寝息を立てていた。
「二次会、ほっしーの家でいいんだよねー?」
 朝までとことん飲み明かす、という時は、たいてい保志さんの家になだれ込むらしい。一番広くて立地がいいのだそうだ。
「梨沙、今日は暴れるなよ」
「もう物壊すの勘弁ね」
 釘を刺すように言われて、リサさんが頬をふくらませている。過去に一体なにを壊したんだろうか。
 一旦お開きのムードになって、各々帰り支度を始める。もう席なんて途中からぐちゃぐちゃになっていて、荷物も適当に置きっぱなし。私もお財布を出そうとカバンの中を探って、携帯がないことに気が付いた。途中まで持ってたはずだけど、どこに置いたっけ?
 きょろきょろ見渡すと、リサさんの前に放置されているのが見えた。
「あ、携帯ヒナちゃんのー? さっき長いこと鳴ってたよ」
 電話なんか滅多にかかってこないのに、誰からだろう。はい、とリサさんに渡されて、その場で確認する。着信アリ、一件。
 履歴を表示して、固まってしまった。
「ん? どしたの?」
 画面を見たまま動かなくなった私を、訝しげにリサさんが見る。ひょい、と画面を覗き込んで、叫んだ。
「ガクさんじゃん!」
 表示された桐原さんの文字。
 時間を見ると、本当についさっきだ。
「かけ直しなよ。早く!」
 リサさんに急かされるけど、私は困惑して手が動かせない。
「だって、なんで?」
 もう待たないでと言われて以来、一ヶ月近くなんの連絡もなかったのに、今更何の用事だろう。改めて謝罪でもされるんだろうか。桐原さんならあり得る気がする。