「リサさんのおかげで、みんなにも会えたし。いろんな体験させてもらいました」
「リサもヒナちゃん大好き。こっちこそ出会ってくれてありがと!」
 あーもう可愛いなあ、とぎゅうぎゅう抱きしめられて、ちょっと苦しい。
「なんでこんなに可愛いのに、それがわかんない男がいるんだろう」
 声色が少し怒ったものに変わった。
「やっぱりリサ、ヒナちゃんにはハッピーになってほしい」
 抱きつく腕に力を込めながら、駄々をこねるような口調でリサさんが言った。
「詳しい事情、わかんないけど、ガクさんとラブラブにならなきゃやだ」
「でも私、きっぱりふられちゃったんです」
 最初からずっと応援してくれていたリサさんには感謝している。けど結局、私は優衣さんの代わりにはなれなかった。優衣さんを失ったあとの悲しい気持ちを、癒してあげることはできなかったから。
「もう、二人で会うことはないと思います」
 困った顔しかできない私の目を、リサさんが覗き込む。
「でもまだ好きなんでしょ? それでいいの?」
「桐原さんの負担にはなりたくないから」
 待たないで欲しい、と言われたのだから、待たない。ゆっくり時間をかけて、自然に好きな気持ちが消えていくのを待とう。そう決めた。
「もう、会いません」
 読者モデルも辞めようと思っている。理恵さんはきっとわかってくれるだろう。接点をなくして、ずっと会わずにいれば、いつかきっと、悲しい思い出ではなく、楽しかった思い出として思い返せる日が来る。
 大丈夫、と笑って見せると、またリサさんが顔をくしゃくしゃにして抱きついてきた。
「ほんといい子なんだからー、もう、ヒナちゃんのばかー」
 私の代わりに泣き出したリサさんの頭を撫でながら、私もちょっと涙目になってしまった。でもここで泣いたら止められなくなりそうだから、泣かないように密かに歯を食いしばる。
「ほら、飲むぞ。今日は朝まで騒ぐんだろ」
 西さんがそう言って、体を起こしたリサさんにビールの入ったグラスを渡した。
「ヒナも、ほら。潰れたら送っていってあげるから、安心して飲みなさい」
 私は愛香に、カクテルのグラスを握らされる。
 涙を拭ったリサさんが、よおし、とグラスを高々と掲げた。
「ヒナちゃんの幸せを祈って、本日二度目のかんぱーい!」
 かんぱーい、とみんなの声が重なって、改めて、このあたたかな人たちに出会えてよかったと思った。