またもや宇野さん行きつけのこじんまりとしたカフェバーで、私たちは思い切り食べて、飲んだ。みんないつもよりピッチが早くて、いつも以上にはしゃいでいた。早々にハイテンションになっていたリサさんは、全員に抱きつきまくって西さんと宇野さんに止められて、今は保志さんに絡んで、愛香とのことを根掘り葉掘り聞いている。
「ねえねえ、どーやって愛香ちゃん落としたのぉ?」
「誠心誠意気持ちをお伝えしたまでです」
「えー、ほっしーに誠意なんてあるわけないじゃーん」
 相当酔っていそうだけど、愛香には絡んでこない辺り、一定の理性は保ってるんだろう。
 愛香は見て見ぬふりをして、小川さんと関係のない話を続けている。そんな愛香に、意地悪な声で聞いたのは潤平くん。
「なあ、ショーで抱き寄せられた時に、保志さんになに言われたの?」
 そういえば、保志さんがなにか耳元で囁いてたっけ。
「言えません」
「言えないようなことなんだ?」
「違うわよっ」
 愛香をからかうように質問を重ね始めた。潤平くんも今日はいつもより飲んでるみたい。
 小川さんは前みたいにとろんとした目になっていて、西さんと宇野さんはリサさんの様子を横目で見ながら、二人でデザインについての真面目な話をしていて。
 大勢でワイワイするのはあんまり得意じゃなかったけど、ここにいるみんなと騒ぐのは楽しかった。知り合ってからたった半年、しかも数回しかみんなで集まることはなかったけど、会えてよかったとしみじみ思う。もうお別れなんだな、と思うと、すごく寂しくなる。
「どしたの、ヒナちゃん?」
 なんだかしんみりしてしまった私に気付いて、リサさんが近づいてきた。
 もうリサさんともほとんど会えなくなるんだな。元気で明るくて、いつもさりげなく私を気遣ってくれたリサさん。もっとたくさん話したかったし、出かけたりもしたかった。
 読者モデルとしての最初の撮影が、リサさんと一緒で本当によかった。
「ありがとうございます、リサさん。私に出会ってくれて」
 突然感謝を伝えたくなって、酔いに任せて言ってみた。リサさんが急にきゅっと鼻に皺を寄せて、むずかる子供みたいな顔をする。
「もー、そういうこと言わないのー。酔ってると涙もろくなっちゃうんだからー」
 そう言って抱きついてくるリサさんはもうすでに涙声だった。いつの間にかみんなも私たちの様子に気付いて、笑いながら見ている。