自分でも知らず知らずのうちに、写りこんでいる感情。それはきっと、自己防衛のために塗り固めた嘘は一つも混ざっていない、純粋な気持ち。
「あの写真、沢木さんにはどう見えました?」
「あの子のことが大事で大事でたまんない、って感じ? 俺にはお前がなにをそんなにグズグズ迷ってんのかが理解できねえ」
 何をどう言い訳しても、写真に写りこんだその気持ちが俺の掛け値なしの本心なんだろう。
 それでもその感情を、表に出すのが怖い。
「沢木さんと理恵って、どっちから付き合おうって言い出したんですか?」
「はあ? いきなりなんだよ?」
「そういえば聞いてなかったな、と思って」
 ニューヨークから帰ってきたとき、二人は既に付き合っていた。知り合うきっかけは俺だったんだろうけど、そこからどうやって恋愛関係に発展したんだろう。
「あなたがそういうのに興味持つのって、なんか意外」
「別に今まで気にならなかったんだけど。酔ってるのかもな」
 何故か今、突然聞きたくなったのだ。
「そもそもいつから付き合ってたわけ?」
「お前がニューヨークに行ってからも、たまに連絡は取ってたんだよ。俺がこっちに帰って来たときに飯食うくらいだったけど」
「本格的に付き合いだしたのは、遼一さんが写真館を継ぐって決まった時からかな」
 ということは、俺が日本にいない間は、ただの知り合いレベルだったってことか。
「で? 告白は? どっちから?」
 俺のしつこい質問に、二人が目を見交わした。
「まあ、切り出したのは私だけど」
 少し恥ずかしそうに理恵が言う。
「好きです、って? 付き合ってください、って?」
「そんな初々しいこと言わないわよ。でもまあ、そういう意味のことは言ったわね」
「で、沢木さんも? 俺も好き、って?」
「何なんだお前、気持ちわりいな」
 沢木さんが鬱陶しそうな顔をして俺の手からグラスを取り上げた。