一瞬照明が落ちて暗くなったスクリーンに、浮かび上がる『LOVE STORY』、続いて『Cinderella』の文字。音に合わせてステージ上へ歩き出す。中央で正面を向くと、スポットが当たって曲調がポップに変わった。一度顔を見合わせて、確認するように笑い合うと、手を繋いだままランウェイを歩き出す。さあ、短い舞踏会の始まりだ。
顔を上げて、姿勢を伸ばして、重心は腰に。宇野さんに言われたことを思い出しながら、一歩一歩足を踏み出す。客席を見る余裕はないけれど、ちゃんと前を向いて、笑顔を絶やさず。今の私は、王子様と束の間の逢瀬を楽しむシンデレラ。
先端にたどり着いたら、手を離してそれぞれポージング。左右入れ替わってまたポーズを決めると、潤平くんが私の手を取る。その手を軸に、私はくるっと一回転。いつもよろめいてしまっていたけど今日は成功して、ちょっとほっとすると、潤平くんも同じように安堵の表情を浮かべていた。顔を見合わせて、どちらともなく笑みを浮かべる。
そこで曲が一度切れて、鐘の音が鳴った。再び照明が私たちを照らすスポットだけになる。それを合図に、手を離した私は屈み込み、靴を脱ぐ。立ち上がると片方を胸に抱き込んで、片方を潤平くんに差し出す。
逃げ帰る途中でシンデレラが落としていったガラスの靴。でも本当は、わざと残していったのかもしれない。どうか私を見つけ出して、迎えに来て、という願いを込めて、シンデレラが自分の未来を変えるために残した唯一の希望。
靴を潤平くんが受け取ると、再び音楽が流れ始める。今度は一人で、裸足のままで、客席に背を向けて歩き出す。最後まで気を抜かないで、ちゃんと胸を張って。
スクリーンの前にたどり着くと、再び前を向いてポージング。私に続いて戻ってきた潤平くんと目があって、よくできました、と無言で伝えてくれる。そのまま私は下手へ、潤平くんは上手へと下がっていく。
幕の中に下がった瞬間どどっと緊張が解けて、へなへなと座り込んでしまった。小声で良かったよ、と伝えてくれるリサさんの声に、かろうじて頷く。落ち着いているように見せかけて、やっぱり相当緊張してたんじゃない、私。
今から出番の愛香と目が合って、へなっと情けない笑顔を向ける。それを見て苦笑する愛香は、いつも通りに見えた。結局最後は愛香の方が落ち着いてるんだよなあ。
音楽が変わるのを合図に、愛香が一人で歩き出した。情熱的なラテンの音楽に合わせて颯爽と歩いていき、ランウェイの先端まで着くと、今度は保志さんが下手からステージに現れる。こちらも余裕の表情で、保志さんが焦ったり慌てたりする姿って全く想像できない。
愛香の隣に並ぶと、ふたり揃ってポーズを取る。それから、保志さんが愛香の手をとって跪いた。
カルメンって簡単にまとめると、自由奔放なカルメンに衛兵のドン・ホセが恋をして、追いかけるんだけど相手にされなくて、結局刺し殺しちゃう話らしい。さすがに刺し殺す場面は入れられないから、保志さんが愛香に言い寄って、それを愛香がすげなく振り払う感じにしよう、ってことになった。今の二人にはピッタリといえばピッタリだ。
練習では、取られた手を愛香が振りほどいて、ぷいっと顔を背けて去っていく、って感じだったんだけど……。
顔を上げて、姿勢を伸ばして、重心は腰に。宇野さんに言われたことを思い出しながら、一歩一歩足を踏み出す。客席を見る余裕はないけれど、ちゃんと前を向いて、笑顔を絶やさず。今の私は、王子様と束の間の逢瀬を楽しむシンデレラ。
先端にたどり着いたら、手を離してそれぞれポージング。左右入れ替わってまたポーズを決めると、潤平くんが私の手を取る。その手を軸に、私はくるっと一回転。いつもよろめいてしまっていたけど今日は成功して、ちょっとほっとすると、潤平くんも同じように安堵の表情を浮かべていた。顔を見合わせて、どちらともなく笑みを浮かべる。
そこで曲が一度切れて、鐘の音が鳴った。再び照明が私たちを照らすスポットだけになる。それを合図に、手を離した私は屈み込み、靴を脱ぐ。立ち上がると片方を胸に抱き込んで、片方を潤平くんに差し出す。
逃げ帰る途中でシンデレラが落としていったガラスの靴。でも本当は、わざと残していったのかもしれない。どうか私を見つけ出して、迎えに来て、という願いを込めて、シンデレラが自分の未来を変えるために残した唯一の希望。
靴を潤平くんが受け取ると、再び音楽が流れ始める。今度は一人で、裸足のままで、客席に背を向けて歩き出す。最後まで気を抜かないで、ちゃんと胸を張って。
スクリーンの前にたどり着くと、再び前を向いてポージング。私に続いて戻ってきた潤平くんと目があって、よくできました、と無言で伝えてくれる。そのまま私は下手へ、潤平くんは上手へと下がっていく。
幕の中に下がった瞬間どどっと緊張が解けて、へなへなと座り込んでしまった。小声で良かったよ、と伝えてくれるリサさんの声に、かろうじて頷く。落ち着いているように見せかけて、やっぱり相当緊張してたんじゃない、私。
今から出番の愛香と目が合って、へなっと情けない笑顔を向ける。それを見て苦笑する愛香は、いつも通りに見えた。結局最後は愛香の方が落ち着いてるんだよなあ。
音楽が変わるのを合図に、愛香が一人で歩き出した。情熱的なラテンの音楽に合わせて颯爽と歩いていき、ランウェイの先端まで着くと、今度は保志さんが下手からステージに現れる。こちらも余裕の表情で、保志さんが焦ったり慌てたりする姿って全く想像できない。
愛香の隣に並ぶと、ふたり揃ってポーズを取る。それから、保志さんが愛香の手をとって跪いた。
カルメンって簡単にまとめると、自由奔放なカルメンに衛兵のドン・ホセが恋をして、追いかけるんだけど相手にされなくて、結局刺し殺しちゃう話らしい。さすがに刺し殺す場面は入れられないから、保志さんが愛香に言い寄って、それを愛香がすげなく振り払う感じにしよう、ってことになった。今の二人にはピッタリといえばピッタリだ。
練習では、取られた手を愛香が振りほどいて、ぷいっと顔を背けて去っていく、って感じだったんだけど……。