「変に恥ずかしがれば恥ずかしがるだけ、カッコ悪くなっちゃうしね。で、具体的にはどういうの?」
 宇野さんに促されて、小川さんが意気揚々と語り始める。その内容は、まあ聞いただけならできなくもなさそうだった。
「亮介と愛香ちゃん、それ演技でもなんでもないじゃん」
「ヒナちゃんと潤平くんのも、おもしろいわね。ちょっと解釈変わってて」
 みんながすでに賛成ムードで、私と愛香は反対の声をあげる余地がなかった。
「わかりました。やります」
 愛香が観念したように言った。愛香がそういうのなら私も嫌がるわけにもいかず、無言で頷いてみせると、小川さんがやったあ、と笑って、ごそごそとラジカセを取り出した。
「音に合わせて動いてみてもらおうと思って、編集した曲持ってきたんだよね」
 その準備の良さに、改めてため息が漏れた。私たちがなんと言おうが、やらせるつもりだった、ってことですよね、それ。
 音楽を聴きながら、小川さんの指示通りに動いてみる。ところどころ戸惑ったり、笑いがおきたりしながら、みんなで一通りの流れを決めていった。
 最後に一度通してみて、小川さんが音楽を止める。つ、疲れた……。
「うん、いい感じー。後は照れないように、練習あるのみ、かな」
 恥ずかしさが抜けない私と愛香とは対照的に、潤平くんと保志さんは全く照れずに堂々とこなしていた。場馴れしているのか、もともとの性格なのか。
 最後に小川さんがディスクを二枚渡してくれる。ショーで使う曲が入ったCDと、去年のショーの様子が入ったDVDだそうだ。見てみてイメージ掴んでね、ということらしい。
「本番まで何回か集まって練習しよう。前日と、当日にも実際の舞台でリハーサルできるから。大丈夫大丈夫」
 わくわくした様子の小川さんに少し恨めしげな視線を向けると、宇野さんが宥めるように私の肩を叩いた。残り二週間ちょっと、なんとかなるのか、ならないのか。
「後は楽しむのみ! おもいっきりやるぞー!」
 リサさんの掛け声に、小川さんがおー! と手を上げる。他のみんなも苦笑しながら次々に同調して、小さな教室に掛け声が響き渡った。