私と潤平くん、愛香と保志さんが並んで立つ。小川さんが、はあ、とため息をついた。
「やーもう、おとぎ話の主人公みたいだよね」
 他の三人も大きく頷く。
「テーマに忠実にして正解だったな。変に浮いたらどうしようかと思ったけど」
「一歩間違えたらコスプレだもんね。でも全然違和感ないや」
「やっぱりモデル、お願いして良かったわね」
 私も、変に意識して潤平くんへの依頼を隠さなくてよかったなあ、と思った。王子様風のこの服を、これだけ違和感なく着こなせる人ってなかなかいないと思う。
 四人にひとしきり眺め倒されたあと、宇野さんの指示のもとランウェイを歩く練習をする。普段あまりヒールを履かない私は、まっすぐ歩くのにも一苦労だった。
「頭を引っ張り上げられてる感じで、腹筋を意識して」
 ただ歩くのに、こんなに筋肉を使ったのは初めてだ。何回か教室を往復しただけで、筋トレをしたみたいに疲れてしまった。
「これ、ほんとに素人ができるものですか?」
 横を見ると、愛香でさえ苦戦している。他のチームのモデルもみんな一般の人が担当、って言ってたけど、普通の人が簡単にこなせるものなんだろうか。
 何気なく呟いた疑問だったけど、保志さんが言いにくそうに教えてくれた。
「実は全然関係ない人に頼む、ってあんまりないんだけどねえ」
 え? 友達とか家族とかに頼む、って言ってたよね?
「ほっしー内緒!」
 慌てたようなリサさんの声を無視して、保志さんが続ける。
「大体僕みたいに、ビジネス科の子がやるんだよね。服の扱い慣れてるし、ショーにも馴染みがあるから」
「えええ?」
 驚いてリサさんのほうを見ると、バツの悪そうな表情を浮かべている。
「だってヒナちゃんに着てもらいたかったんだもん。先にそれ言ったら断られると思って」
 知っていたら確実に断ってたと思う。
「て言うことは、出演者は私たち以外ほとんどこの学校の人、ってことですか?」
 愛香も、げ、って感じで顔をしかめている。そうだとしたら、場違いな空気が半端じゃない。
「生徒以外が全くいない、ってわけじゃないけど、ほとんどいないわね」
 ごめんなさい、と宇野さんが両手を合わせた。