「いつもこんな感じなんですか?」
「そうっすよ。ガクさんとか沢木さんとか、いっつも無茶なことばっかり俺に言うんですから」
 なんだか意外。二人とも大人なイメージなのに、そんな子供っぽいこともするんだ。
「あーあ、もったいない。これで雨があがったら、お前の地位も上がったのになあ」
 桐原さんがわざとらしく言って、吉川さんがそんなのムリっす、と小さく呟いた。
 ほんとに仲いいんだなあ。これで沢木さんとか加わったら、もっと面白そう。
 笑い続ける私を見て、容子さんが慌てて言った。
「ヒナちゃん、笑ってもいいけど、ほどほどに! メイクが崩れちゃう」
「わ、すみません!」
 私も慌てて笑いを引っ込めると、しょうがないなあ、と手早く直してくれた。
「ま、よしりんのせいですからね」
「吉川さん? よしりんって呼ばれてるんですか?」
「そうですよ。かわいいでしょ?」
 まずい、また笑いそう。
「そんな呼び方するの、容子さんくらいですよ」
 吉川さんが情けない顔をする。
「じゃあヒナちゃんもそう呼んであげてください」
「……よしりん?」
「だめ! 道端さんはだめ!」
 そんな吉川さんに笑いながら、容子さんが私のコートを脱がせ、またベールをつけてくれた。
 桐原さんもカメラを手に取って言う。
「じゃあそろそろ再開しようか。よしりん、ストロボ持って」
「ガクさんもだめ! 絶対イヤだ!」
 ほとんど絶叫するように吉川さんが必死で拒否している。
 私もさっきの位置に立って、必死で笑いを引っ込めようと頑張るけど、吉川さんが目に入るとどうしても笑ってしまった。
「す、すみません、吉川さんを見ちゃうとっ」
「ヒナちゃん、完全にツボに入っちゃいましたね」
「吉川~。お前透明人間になれ」
「だからムチャぶりやめてくださいってば」
 なんとか落ち着こうと、ステンドグラスを振り仰ぐ。なんだか天使も笑ってる気がした。
 桐原さんは吉川さんとふざけ合いながら、シャッターを切り続けていた。さっきよりも自然に笑えている自分がわかる。……あ、もしかして、わざとふざけてくれたのかな。いつの間にか、肩に力が入っちゃってたみたい。
 ちら、と吉川さんを見ると、不思議そうに見返してくる。
「ありがとうございます」
「え? は? どうも?」
 お礼を言っても、よくわかってないみたいな返事だった。容子さんや鈴木さんも、その様子を見て笑いを噛み殺している。
 桐原さんは、いつも通りの笑顔。
「じゃあ日南子ちゃん、今度はこっち向いて」
「はい!」