真剣な顔でリングを見ていた桐原さんが選んだのは、ピンクゴールドとプラチナが絡み合ったものだった。小さなダイヤがいくつも散りばめられていて、お星様みたいにキラキラ輝いている。
「先にベールつけちゃいましょう。ヒナちゃん、すみませんけどコート脱いでもらっていいですか?」
容子さんの言葉に頷いて、コートから腕を抜くと、途端に冷気が肌を撫でた。ゾクリ、とする寒気を振り払うように、コートを脱ぎ捨てる。
「大丈夫?」
心配そうに私を見る桐原さんに、笑って答える。確かに気温は低いけど、建物内で風がないから、慣れてしまえば大丈夫だろう。
容子さんが少しメイクを直しつつ、うつむき気味の私に手早くベールをつけていく。こんな薄い布一枚でも、暖かさを感じるのが不思議。
「じゃあガクさん、それはめてあげてくださいね」
リングを指差した容子さんの言葉に、驚いて顔を上げる。
「それはちょっと」
意味なんてないけど、なんだか恥ずかしい。
「自分でつけますから……っ」
慌てる私の左手を、桐原さんが無言で掴んだ。驚いて動けない私に構わず、リングを取って、薬指にそっとはめた。
「うん。似合う」
照れることもなくいうその声は、やっぱり落ち着いていて、私一人がドキドキするのがすごく悔しい。
ニコニコする容子さんの横でなぜか吉川さんがそわそわしていた。
「え、なんすかこの雰囲気、わかってないのって俺だけ? てか前言ってた、あの子、って道端さん?」
ぶつぶつ呟く独り言はみんなに黙殺される。
「じゃあ、日南子ちゃんこの辺立って……吉川、ライト」
「ういっす」
桐原さんに促されるままマリア像の前に立つと、一気に撮影モードの空気になった。賑やかな吉川さんまで真剣な表情で、容子さんも鈴木さんも、黙ってこちらを見ている。
一人いつもと変わらない穏やかな笑顔で、カメラを覗き込みながら桐原さんが話しかけてくれる。
「やっぱり緊張する?」
「少し。だいぶ慣れたと思ってたんですけど」
「今日はいつもと雰囲気違うしね。ライティング決めちゃいたいから、今は気を抜いてていいよ」
「先にベールつけちゃいましょう。ヒナちゃん、すみませんけどコート脱いでもらっていいですか?」
容子さんの言葉に頷いて、コートから腕を抜くと、途端に冷気が肌を撫でた。ゾクリ、とする寒気を振り払うように、コートを脱ぎ捨てる。
「大丈夫?」
心配そうに私を見る桐原さんに、笑って答える。確かに気温は低いけど、建物内で風がないから、慣れてしまえば大丈夫だろう。
容子さんが少しメイクを直しつつ、うつむき気味の私に手早くベールをつけていく。こんな薄い布一枚でも、暖かさを感じるのが不思議。
「じゃあガクさん、それはめてあげてくださいね」
リングを指差した容子さんの言葉に、驚いて顔を上げる。
「それはちょっと」
意味なんてないけど、なんだか恥ずかしい。
「自分でつけますから……っ」
慌てる私の左手を、桐原さんが無言で掴んだ。驚いて動けない私に構わず、リングを取って、薬指にそっとはめた。
「うん。似合う」
照れることもなくいうその声は、やっぱり落ち着いていて、私一人がドキドキするのがすごく悔しい。
ニコニコする容子さんの横でなぜか吉川さんがそわそわしていた。
「え、なんすかこの雰囲気、わかってないのって俺だけ? てか前言ってた、あの子、って道端さん?」
ぶつぶつ呟く独り言はみんなに黙殺される。
「じゃあ、日南子ちゃんこの辺立って……吉川、ライト」
「ういっす」
桐原さんに促されるままマリア像の前に立つと、一気に撮影モードの空気になった。賑やかな吉川さんまで真剣な表情で、容子さんも鈴木さんも、黙ってこちらを見ている。
一人いつもと変わらない穏やかな笑顔で、カメラを覗き込みながら桐原さんが話しかけてくれる。
「やっぱり緊張する?」
「少し。だいぶ慣れたと思ってたんですけど」
「今日はいつもと雰囲気違うしね。ライティング決めちゃいたいから、今は気を抜いてていいよ」