ちなみに僕はこれ、と保志さんがボルドーのタキシードの横に立つ。とすると必然的に潤平くんは白のジャケットの方。
 色気のある赤いドレスなんて私に似合うはずがなく、ということは私は白のワンピース。愛香はドレス、とそれぞれ自分が着るらしい服の横に立つと、小川さんがご名答、と笑った。
「うわ、俺こんなの着るんだ。似合うのかな」
 マネキンに着せられた服を見て、珍しく潤平くんが弱気な姿勢。
 私だって相当不安だ。かわいいけど、こんなの私に着こなせるかな。
「だーいじょうぶ。みんなに合わせてデザインしたんだから。それを圭太が着たら笑いものにしかならないけどね」
 リサさんの言葉に西さんがうるせー、と返す。
「ま、でもリサの言う通りだから。とりあえず着てみてよ」
 西さんの一言で、男性陣は別教室に移動していく。女の子だけになった部屋で、マネキンに着せられた服を、リサさんが丁寧に脱がせていった。
「まだ仮止めのところとかいっぱいあるから、気をつけて。本番は下着もドレス用の借りられるけど、今日はそのままでね」
 宇野さんの説明に、なんだか思っていたよりも本格的なんだな、と思った。それこそ半分遊び感覚なところがあったけど、意識を改めなくては。
 手伝ってもらいながらなんとか着替えると、小川さんが黄色い声をあげた。
「うわーー、やっぱり似合う! 可愛い!」
「イメージぴったりね」
 宇野さんもそう言ってじっくり眺めていて、リサさんは得意そうな表情を浮かべる。
「やっぱりあんた、白似合うわ」
 私を見て感心したように愛香が言うけど、愛香こそドレスがめちゃくちゃ似合ってる。シルエットはシンプルなんだけど、下品にならない程度に肌が出ていて、すごく色っぽい。
 お互いに褒め合っていると、コンコン、とドアが叩かれる。
「もう着替え終わったかー?」
「あ、開けていいよー」
 西さんが裸のマネキンを抱える後ろに、こちらも着替え終わった保志さんと潤平くんの姿。
 うわあ、かっこいい!
 二人とも、全然服に負けてない。というか、それぞれの良さを服が引き立ててる感じ。
「きゃー、似合う似合う、すっごい似合う! 王子様みたい!」
 潤平くんを見た小川さんが、さっきより一オクターブ高い声で歓声をあげた。すごいはしゃぎっぷりで、本物の王子様に会ったみたいにきゃあきゃあ言いながら、潤平くんの周りを回っている。さすがの潤平くんも恥ずかしそう。
 でも確かに、小川さんの言う通り。王子様、っていう例えがぴったりだ。
「同じ日本人なのにこんなの似合うのって詐欺だよな。俺も一回着てみたけど全然似合わなかったのに」
 西さんがぼやいている。