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『とゆーワケで、今回の卒展、めっちゃ気合入ってるんだ! いつもより大きい会場だし、一般のお客さんも入れるし』
 理恵と事務所で打ち合わせの途中、携帯がなって表示されたのはリサちゃんの番号だった。電話を取るなり彼女の明るい声が響き出す。卒展のショーが今度から一般公開になって、そのモデルを日南子ちゃんに頼んだ、という話。 久しぶりに聞くリサちゃんの声は、電話越しでも生き生きとしていて、心の底から楽しんでいるのが伝わってきた。
『で、どうせならちゃんとプロのカメラマンに入ってもらって記録してもらおう、ってことになったから、リサが先生たちにガクさんのこと猛プッシュしといたよ。二月の第三週の日曜日、まだ仕事とか入ってないよね?』
 これを伝えたかったのか、とようやく納得がいった。楽しそうなのはいいけれど、なんでわざわざ電話してきたのか、不思議に思い始めていたところだったのだ。
「まだなんにも予定はないよ」
『じゃあ、改めて学校から依頼入ると思うから! 絶対断らないでね!』
「了解」
 学生最後の晴れ舞台を任せてくれる、その気持ちが素直に嬉しい。妹みたいになついてくれるリサちゃんだから、なおさらだ。
『ありがと! でね、本題なんだけど』
 今のが本題じゃなかったのか。
『ショーのモデル、ヒナちゃんの友達にも頼むことになったんだけど。愛香ちゃん、って子と、潤平くんって男の子』
 潤平くん。……あいつだ。
『その子がね、どうやらヒナちゃんのことが好きらしいんだけど』
「らしいね」
『えっ? 知ってるの?』
「この前写真撮った。新しくパトリのモデルやる子だろ?」
 挑戦的に俺を見る視線を思い出す。直々に宣言されたのだから、知らないわけがない。
『ヒナちゃんのこと、結構真剣みたいだよ、その子』
「そう」
『そう、って。なんでそんな人ごとみたいなの? もうちょっと焦りなよ!』
 俺の素っ気ない返事に、リサちゃんの声がどんどん大きくなっていく。
『リサ鈍いけど、言われたらすごいわかりやすいくらいヒナちゃんのこと大事にしてたよ? おんなじ学校でおんなじ学科でおんなじ年で、ガクさんなんかと比べ物にならないくらい近くにいるのに。ヒナちゃんが心変わりしちゃったらどうするの?』
「どうするもなにも。そうなったらそうなっただよ」
 それだけ近くにいれば、あいつを好きになることもあるのかもしれない。
そのほうが彼女も幸せになれるのなら、それでもいい。