モデルの件を二人が快諾してくれた、と連絡したら、早いうちに採寸させて、ということだったので、数日後に今度は三人でリサさんの学校におじゃましていた。前のようにみんな集まってくれていて、自己紹介し合うとすぐに打ち解ける。潤平くんに会いたがっていた小川さんは大喜びで別の教室で潤平くんの採寸をしていて、愛香ににこやかな笑顔を向けていた保志さんは、私たちの教室についてこようとして西さんに殴られていた。
「もしかして、恋愛絡み?」
 愛香の採寸を担当していた宇野さんが、含み笑いを浮かべて言った。
「え、なになにどういうこと?」
「梨沙って意外と鈍いわよね。潤平くん、ヒナちゃんに対する態度が他とちょっと違った」
 え、違いましたか? みんなの前では特にちょっかい出してきたりしてなかったはずなのに。こんな短時間で見抜くなんて、宇野さんが鋭すぎです。
「えぇっ、そうなの? ってことはええ? ガクさんの敵!?」
 メジャーを取り落としながらリサさんが叫ぶ。
「いや、敵ってわけじゃ」
「そうなんですよ、敵なんです。なのにこの子、ぼんやりしてるというか、狙われてるのわかってるのに平気で一緒にいるし」
「ちゃんとはっきりお断りしてるよ?」
「そんなの全然あいつに響いてないっ」
 ぴしゃっと言われて言い返せない私に、宇野さんが申し訳なさそうに声をかける。
「無責任にモデルなんか誘っちゃったけど、もしかしてまずかったかしら?」
「いえ、そんなことは全く。事情をお伝えしてなかったのは私ですから」
 とはいえあの時、潤平くんは私のことが好きなので困ります、なんて言う勇気は私にはなかった。
 メジャーを拾って私の肩に当てるリサさんが、困ったような顔をする。
「う~ん、そうかあ。そんな面白いことに……」
 顔は困ってるのに、発言の中身が全然困ってない。
「私は潤平くんのことただの友達としか思ってませんし。潤平くんだってムキになってるだけですよ、きっと」
 自分で言って、ああこれ昔私が桐原さんに言われたなあ、なんて自虐的なことを思った。
 とにかく、潤平くんからは必死さみたいなものが一切見えないのだ。私が簡単に落ちなかったから、意地になっているだけに違いない。
「そうかしらねえ」
「全く呑気なんだから」
「うう~」
 意味深な声と呆れた声と、なぜか唸り声を上げるリサさんの声に挟まれて、私は一人無言を貫いた。