見知らぬ人たちにかなり砕けた紹介をされて、私は慌てて頭を下げる。
「道端日南子です」
「お~、これが噂の」
「ホントだ、かっわいい」
 それぞれに立ち上がって私とリサさんを囲むように近寄ってくる。興味深げにまじまじと観察されて、居心地悪いことこの上ない。
 そんな私の様子に気づいた、女の子にしては長身のショートカットの子が、フォローするように言葉をかけてくれた。
「動物園のパンダみたいにジロジロ見ない。道端さんが困ってるわよ」
 あー、ごめんごめん、と、私の右側にいた男の子が笑った。
「いきなり連れてこられたんだもんな。リサからなんにも聞いてないんだろ?」
 無言でこくこく頷くと、その子が呆れたようにリサさんを見る。
「おい、説明してやれよ」
「ふんだ、説明しようと思ったら圭太(けいた)たちが寄ってきたんじゃん」
 リサさんがべえ、と舌を出して、それから私に向き直る。
「びっくりさせてごめんね。この子達は私の同級生。科は違ったりするけどいつも一緒につるんでるんだ。でね、ヒナちゃんに頼みたいことというのはぁ」
 じゃじゃん、と机に置いてあった資料の束を突き出される。
 第五十五回卒業制作展ファッションコンペステージ企画立案書。
 ……ステージ?
「二月のファッションショーの、モデルになってくださーい!」
 資料を引っ込めて、リサさんがにこっ、と笑う。
「ファッションショーのモデルって……ステージを歩くってことですか!?」
「そう! リサの服、どうしてもヒナちゃんに着て欲しい!」
「でも私、ショーなんて出たことも見たこともないし」
「だいじょうぶー、みんなそう」
 みんなって? 事情をよく飲み込めない私の頭上に浮かぶはてなマークが見えたのか、さっきフォローを入れてくれた女の子が詳しく説明してくれる。
「二月に私たちの卒業制作展があるんだけど、それの最後に生徒主催のファッションショーがあるのよ。ショーの洋服の作成はもちろん、モデルのスカウトからヘアメイクまで全部自分たちでやるの。モデルさんはみんな、友達だったり家族だったりするけど、一般の人が対象。で、そのモデルをあなたにやってもらいたい、って話なんだけど」
 なるほど、ほかの人たちもみんな素人さんなら、私一人が浮いたりもしないだろう。リサさんの作る洋服も見てみたいし……何より、今まで触れたことのない世界に興味がある。面白そう。