結局ずっと考え事をしてしまって、厳しい教授の講義なのに全く集中できなかった。授業が終わるとすぐ、潤平くんから逃げるように教室を出る。本当は次のコマ、空きだから、全然急がなくてもいいんだけど。
わざと関係ない理学部棟まで歩いてきて、人気のない外の休憩スペースのベンチに座り、スマホを開く。表示させたのは、食事に連れて行ってもらったお礼を告げる、簡単なメールのやり取り。あの日からもう、二週間ちょっと経つ。
会いたいなあ。
新学期が始まって、履修登録やなんだでバタバタしていたせいで、そのメール以来なんの連絡もしていない。そろそろまた、差し入れを持って会いに行ってもいいだろうか。この前の食事のお礼もしたいし。
早速メールを打ちかけた私の脳裏に、さっきの潤平くんの言葉がよぎった。
ーー一方的につきまとってるだけ。
浮き上がった気持ちがまた沈む。宙ぶらりんな私の立場が、スマホをいじる手を鈍らせる。
桐原さんにとっての私の今の立ち位置は、一体どの辺なんだろう。迷惑、とか思っても、きっと桐原さんは言葉に出さない。どれだけでも待てる、って思ったけど、待つのも案外しんどい。
ふう、とため息をついたとき、手の中のスマホが着信を告げた。
表示されたのはリサさんの名前だった。何回か一緒に遊んで、ちょこちょこメールもしてるけど、最近は予定が合わずにしばらく会ってない。
電話に出ると、相変わらずの元気な声が響いた。
「ヒナちゃん? 元気してたぁ?」
「はい。リサさんもお元気そうですね」
「もっちろん。リサから元気とったらなんにも残んないし。ねえねえ、今日って夕方とか、暇?」
今日はバイトもないし、あとは三限の授業に出るだけだ。
「暇です」
「じゃあ会えないかなあ? で、できたらリサの学校まで来て欲しいんだけど」
リサさんの通う学校は、確か駅前にあったはずだ。バスで一本で行けるはず。
「いいですよ」
「ホント? やったあ。着く前に連絡してくれたら、玄関まで迎えに行くし」
「わかりました。でもなんで学校なんですか?」
ご飯とかお茶なら、駅で待ち合わせた方が良さそうだけど。
「ふふふ、実はねえ、ヒナちゃんにお願いしたいことがあってさあ」
「お願い?」
「うん。内容は来てから話すよ。みんなにも会ってもらいたいし」
みんなって、他にも誰かいるの?
「みんなヒナちゃんに会うの楽しみにしてるよ。イイ子達ばっかりだから怖がらなくても大丈夫。じゃあ、夕方待ってるね~」
「え、待っ」
謎は全く解けないまま、リサさんは電話を切ってしまった。お願いって一体なんなんだろうか、少しだけ不安が残る。まあ、行ってみればわかるか。
約束通り、授業が終わってすぐにバスに乗り込み、リサさんの学校に向かうと、リサさんはわざわざバス停まで迎えに出てくれていた。後ろをついていくと、すぐに学校らしきビルの前に着く。
「ようこそうちの学校へ!」
リサさんが玄関の前で手をあげた。白を基調としたエントランスには受付があって、自販機が並んでいて、なんだか学校じゃなくて会社みたいな雰囲気だ。
こっち、と言われて階段を上り、並んだ教室の一つに入る。と、そこには男の子と女の子が二人ずつ、椅子に座って話していた。
「おっ待たせー。こちら、私のヒナちゃんです」
わざと関係ない理学部棟まで歩いてきて、人気のない外の休憩スペースのベンチに座り、スマホを開く。表示させたのは、食事に連れて行ってもらったお礼を告げる、簡単なメールのやり取り。あの日からもう、二週間ちょっと経つ。
会いたいなあ。
新学期が始まって、履修登録やなんだでバタバタしていたせいで、そのメール以来なんの連絡もしていない。そろそろまた、差し入れを持って会いに行ってもいいだろうか。この前の食事のお礼もしたいし。
早速メールを打ちかけた私の脳裏に、さっきの潤平くんの言葉がよぎった。
ーー一方的につきまとってるだけ。
浮き上がった気持ちがまた沈む。宙ぶらりんな私の立場が、スマホをいじる手を鈍らせる。
桐原さんにとっての私の今の立ち位置は、一体どの辺なんだろう。迷惑、とか思っても、きっと桐原さんは言葉に出さない。どれだけでも待てる、って思ったけど、待つのも案外しんどい。
ふう、とため息をついたとき、手の中のスマホが着信を告げた。
表示されたのはリサさんの名前だった。何回か一緒に遊んで、ちょこちょこメールもしてるけど、最近は予定が合わずにしばらく会ってない。
電話に出ると、相変わらずの元気な声が響いた。
「ヒナちゃん? 元気してたぁ?」
「はい。リサさんもお元気そうですね」
「もっちろん。リサから元気とったらなんにも残んないし。ねえねえ、今日って夕方とか、暇?」
今日はバイトもないし、あとは三限の授業に出るだけだ。
「暇です」
「じゃあ会えないかなあ? で、できたらリサの学校まで来て欲しいんだけど」
リサさんの通う学校は、確か駅前にあったはずだ。バスで一本で行けるはず。
「いいですよ」
「ホント? やったあ。着く前に連絡してくれたら、玄関まで迎えに行くし」
「わかりました。でもなんで学校なんですか?」
ご飯とかお茶なら、駅で待ち合わせた方が良さそうだけど。
「ふふふ、実はねえ、ヒナちゃんにお願いしたいことがあってさあ」
「お願い?」
「うん。内容は来てから話すよ。みんなにも会ってもらいたいし」
みんなって、他にも誰かいるの?
「みんなヒナちゃんに会うの楽しみにしてるよ。イイ子達ばっかりだから怖がらなくても大丈夫。じゃあ、夕方待ってるね~」
「え、待っ」
謎は全く解けないまま、リサさんは電話を切ってしまった。お願いって一体なんなんだろうか、少しだけ不安が残る。まあ、行ってみればわかるか。
約束通り、授業が終わってすぐにバスに乗り込み、リサさんの学校に向かうと、リサさんはわざわざバス停まで迎えに出てくれていた。後ろをついていくと、すぐに学校らしきビルの前に着く。
「ようこそうちの学校へ!」
リサさんが玄関の前で手をあげた。白を基調としたエントランスには受付があって、自販機が並んでいて、なんだか学校じゃなくて会社みたいな雰囲気だ。
こっち、と言われて階段を上り、並んだ教室の一つに入る。と、そこには男の子と女の子が二人ずつ、椅子に座って話していた。
「おっ待たせー。こちら、私のヒナちゃんです」