仕事の合間に、撮った写真を加工して柴田にデータで送ってやると、向こうから電話がかかってきた。
『やっぱお前天才。すっげえいい』
「褒めたってもうなんにも出ないぞ」
 本心だって、と電話の向こうで柴田が笑う。なんでも、この写真でホームページを作るらしい。雑誌などの媒体にはほとんど載せず、口コミだけで今の客数を維持しているらしいから、それができればもっと繁盛するんだろう。
『で、さ。あの最後の写真、ほんとに使っていいの?』
「本人には了承とってあるけど」
『でも、あの子実際にあの写真見てないんだろ?』
「そうだけど。なんか問題あったか?」
『いや、問題っていうか。お前のこと好き好きオーラがダダ漏れじゃん、あれ』
 そうか、こいつあの雑誌見てないんだったっけ。
「前にもああいう写真、雑誌に載ったことがあったから、気にしないと思う」
 周りに隠す気があるのかないのかわからないけど、素直な彼女の心の中は常に周囲にダダ漏れだ。
『そんなもんかあ? まあいいや、じゃあ遠慮なく使わせてもらうわ。ウチのコンセプトにぴったりだ、って奥さんが気に入っちゃってさ』
「コンセプト、ってなんだっけ?」
『たいせつな人と、たいせつな時間を、ここで、って。全部奥さんが考えたんだけど』
 たいせつな人と、たいせつな時間を、か。確かにあの空間は、そうやってゆったりとした時間を過ごすのにぴったりだと思う。
『なあなあ。あの後、あの子どうしたわけ?』
「どうした、って、普通に家に送ってったけど」
『まじで? やっちゃわなかったの?』
「切るぞ」
 うそうそ、待てって、と慌てたように呼び止める。
『まあ、簡単に手出せそうな感じじゃなかったもんな。お前が今まで遊んでた子達と真逆だもん。にしても、お前が手こずってるのって、傍から見てたらすげえ楽し』
 今度こそ本当に切ってやった。どうせ用件はあれだけだろう。