相合い傘ということになるし、先輩の家からは少し遠回りになるはずなのに。
「白坂さんさえ良ければ、送らせて」
そんな優しい目を向けられて、断れるはずがない。
「じゃあ、あの……、お願いします」
私が遠慮がちに傘に入る前に、先輩が先に傘を差しかけてくれた。
不意に近づいた距離に胸が高鳴る。
時々、傘を差す先輩の腕が私の二の腕に当たり、緊張が増していく。
門を出てから、沈黙が長く続いていた。先輩につまらない女だと思われていないかな、と心配になってくる。
自分がもっと面白い話ができるタイプだったら、先輩を退屈させずに済むのに、と自己嫌悪に陥った。
「――スケッチブックを持って行こうか、動物園に」
「あ、はい」
話しかけられ、沈黙が途絶えてホッとする。
「楽しみだな、白坂さんと絵を描きに行けること」
「私も……楽しみです」
傘の下で突然目が合って、頬が紅潮していく。
焦る私とは対照的に、先輩は穏やかな表情のまま、私を見つめている。