いつもは、そんなことは考えないんだけど、今日は遠くのほうまで散歩してみようかな。と思った。


 放課後、夕日が廊下に差し込んでいた。


 僕は夏が近づいてきたのを感じながら、制服のまま、帰りに寄り道をすることにした。


 ちょっと広い、静かな公園に行こうと思った。心を落ち着けたかったんだ。



 帰り際、近くで見つけた自販機で、缶コーヒーを一本買って、それを公園のベンチで飲むことにした。



 公園といっても、木々がたくさん生い茂っていて、ちょっとうす暗い場所だった。


 でも僕はそんな静かな場所が好きで、少し怖い雰囲気に、しばらく浸かっていたかった。


 中央公園の入り口に入ると、木の中から、何びきか、鳥たちが飛び立った。


 夕日に照らされた木々たちは、ざわめいているみたいに見えた。


 僕はその中へ、ゆっくりと足を踏み入れた。とても静かな場所だった。


 ここは住宅街の真ん中だったけれども、そんなことを感じさせないような静けさに満ちていた。



 ただの公園のはずなのに、森の匂いがした。それほど、この中央公園は樹木たちが多いのかもしれない。



 日常を忘れさせてくれるような景色が、ほんとうに心地よい。


 僕は、しばらく足を進める。

 樹木たち一本一本の幹のうねりや、生命力は凄かった。


 普段、何も考えずに通っているだけじゃ分からない美しさっていうのが、ある。



 いよいよ深いところまで来たな。と思ったとき、そばにベンチが見えたので、それに腰を掛けることにした。



 僕はしばらく、そのベンチでくつろぎながら、缶コーヒーを飲んでいた。


 缶コーヒーってヤツが僕は好きでね。なんか、あの苦みがとっても旨いんだ。


 とくに静かな公園で飲む一杯は至高だよ。身体に染み渡るっていうのかな。


 とにかく美味しいんだ。


 でも、缶コーヒーを飲んだあとは、ちゃんと缶は捨てなくちゃならない。



 そこら辺にポイ捨てするのは、いけないからね。自販機専用のゴミ箱のところまで行って、僕は缶を捨てて、もといたベンチのほうに戻った時だったよ。


 
 …………女の子がいたんだ。

 僕と同い年くらいの、綺麗な顔立ちをした少女が、一人で佇んでいたんだ。

 
 白い服を着ていて、どこか儚げな表情を浮かべている。